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おもしろ日本美術タイトル

おもしろ日本美術2 第四回

タイトルアイコン虎はヨーロッパではコワもてアジアン・モンスター?

色絵梅花虎文十角八寸皿

柿右衛門色絵梅花虎絵十角皿

柿右衛門色絵梅花虎絵十角皿

 五代将軍綱吉公の時代には、有力大名への”将軍御成り”がなされ、藩の御用窯では大宴会用豪華食器セットの注文(「都合物」)が相次いだ。これにともない、北前船の行きかう港町をはじめ、地方の豪農・豪商では地域の祝儀や法事のふるまい宴用の需要も掘り起こされ、民窯も活気を呈した。テーブルウエアーの世界において、主役であった漆器がその座を陶磁器に譲ることとなったのである。海外向け・国内向け双方にインテリア・グッズとしての飾り皿、飾り壺の需要もあり、しかも、対、三つもの、五客組、二十客組、百客組・・・等々、数物の大量需要である。

 東京渋谷の「戸栗美術館」の蔵品に、評判の三つ組の虎絵十角皿のセットがある。

柿右衛門・チェルシー虎

柿右衛門・チェルシー虎

柿右衛門・マイセン虎1

柿右衛門・マイセン虎1

柿右衛門・マイセン虎2

柿右衛門・マイセン虎2

 上手の盛期の柿右衛門色絵皿には八寸、七寸、六寸強の揃いが一般的であったようで、「柿右衛門色絵人物舟遊文皿」の三つ組の例も知られている。なお、完璧は魔がさすとしてセット中の一枚の図柄に変化を加えることもあった。

 本品は、まさにその戸栗美術館の蔵品と同等のセットの大にあたる虎絵の八寸皿で、経年の傷みがほとんどない濁手柿右衛門色絵の美品である。いうまでもなく、第三回紹介の双鶴文輪花皿と同様、赤の唐花を鐔縁にめぐらせた美麗なデザインで、華やかながらも高雅なその気品は柿右衛門様式の最盛期の粋を示している。

 そもそも、柿右衛門様式色絵の虎には赤虎と黄虎の二系統あるようで、前者は竹の上部に纏わりつく龍とその下で吠える虎といった対峙構成を祖型とし、その龍が存在を示唆する金団雲、さらには虎の目線のみへと象徴化をたどり、竹そのものも梅花に代替され、華やかな色面効果に至ったと理解できる。後者は、左右反転した形で、その虎を竹に絡め牙をむかせ、梅の樹(龍を暗示)と対峙させ、余白を生かしつつ、よりデザイン的、象徴的な完成度をめざしたと見え、バリエーションとして梅が牡丹の生垣に代わった図様もある。

 マイセンでは、後者の虎が、イエロー・ライオンとして、草創当時から現代まで定番の人気キャラクターとしてあり、柿右衛門のオリジナルの図柄を踏襲しながらも、時代とともに現代風に、またヨーロッパ好みにアレンジしてきている。(美術評論家・文星芸術大学長)


上野 憲示
上野 憲示

1948年、大阪生まれ。

東京大学文学部美術史学科卒業。栃木県立美術館学芸員。東京大学、清泉女子大学などの非常勤講師(美術史学・博物館学担当)を経て、現在、文星芸術大学学長ならびに芸術理論専攻教授。

著書に『鳥獣人物戯画(日本絵巻大成六)』(中央公論社)、『渡辺崋山の写生帖』(グラフィック社)、『ハイビジョン鳥獣人物戯画』(ハイビジョンミュージアム推進協議会)、おもしろ日本美術1(文星芸術大学出版)など、美術史家、美術評論家として活躍。


おもしろ日本美術3バックナンバー
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