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おもしろ日本美術

おもしろ日本美術2 第十三回

諸侯磁器の間で中国官窯青花壺に囲まれつつ光彩を放つ和製染付大壺

古伊万里染付鳳凰文八角大壺

染付大壺表

染付大壺表

 藍染めを思わせる岩に牡丹、鳳凰という中国風花鳥の鮮やかな意匠の染付大壺(蓋は欠失、沈香壺系、高さ58.0cm)。表裏二点の鳳凰図(飛来して急降下の鳳凰、奇石の上で左側面を見せる鳳凰)の構成はすでに完成度が高く、明代の景徳鎮官窯の典型的な青花壺の倣製より出たものと思われる。肩の部分、小渦の数珠繋ぎ文の下に団扇風パターンと蛸唐草の二層の連続文様、口取の八角柱形の各側面には中央に木の葉をあしらった幡幕風パターン等、細部にも精緻な手わざが光っており、ダミ筆を巧みに操り、濃淡、ぼかしなどを取り込むなど日本的な感性による工夫も感じられる。
 同じ意匠の大壺が、1695年完成(第二次大戦中焼失)のベルリンのオラニエンブルグ城磁器の間の天井画に描かれていたといい、2点あるいは3点セット(花瓶2点との5点組とも)の同城自慢の所蔵の品であった可能性が高い。
5点セットの例

5点セットの例

染付大壺裏

染付大壺裏

 ドレスデン国立美術館には、まさしく、同手の蓋完備の大壺が所蔵されている(高さ80.0cm)。蓋の意匠はとみるに、菊花形台を伴う宝珠形摘み、蛸唐草の層の下に本体の鳳凰図の圧縮版の文様層、そして張り出した鍔上には小渦の数珠繋ぎ文との展開である。なお、里帰りの名品として有田町歴史民俗資料館にほぼ同意匠の蓋付大壺があるが、こちらは基底部付近の染付線が2本でなく1本で、高さ73.0cmと若干小ぶりで別セットの類似作とみたい。その他、羽を拡げて舞い降りる鳳凰、牡丹花・奇石、唐草といった意匠構成が共通する色絵大壺も知られており、あるいは染付・色絵の同時展開とも判断でき興味深い(ドレスデン国立美術館、栗田美術館蔵)。
 いずれにしろ対ヨーロッパの特需に沸き立ち、鉄分を除去した上質の磁土の精選がなり(延宝年間)、陶工たちの製陶・絵付技術が高度化した、天和・貞享ごろの一連の意欲作と見てよいであろう。


蓋付の同手大壷

蓋付の同手大壷

同意匠色絵大壷

同意匠色絵大壷

シャルロッテンブルグ城磁器の間飾り壷

シャルロッテンブルグ城磁器の間飾り壷


上野 憲示
上野 憲示

1948年、大阪生まれ。

東京大学文学部美術史学科卒業。栃木県立美術館学芸員。東京大学、清泉女子大学などの非常勤講師(美術史学・博物館学担当)を経て、現在、文星芸術大学学長ならびに芸術理論専攻教授。

著書に『鳥獣人物戯画(日本絵巻大成六)』(中央公論社)、『渡辺崋山の写生帖』(グラフィック社)、『ハイビジョン鳥獣人物戯画』(ハイビジョンミュージアム推進協議会)、おもしろ日本美術1(文星芸術大学出版)など、美術史家、美術評論家として活躍。


おもしろ日本美術3バックナンバー
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