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おもしろ日本美術

おもしろ日本美術2 第十四回

藍染の優品を思わせる高雅なブルーの発色と精緻な造形

染付鶉三羽文小皿(藍柿右衛門手)

染付鶉三羽文小皿

染付鶉三羽文小皿

同裏(蔦草文様と裏銘[角福]に注目)

同裏(蔦草文様と裏銘[角福]に注目)

 染付(中国・朝鮮では「青花」)とは、白い地にコバルトを含む顔料で描き、上に透明な釉薬をかけて還元焔焼成し青色の文様を発色させたものであるが、顔料や釉薬、焼き方、温度によってさまざまに変化する。
 肥前の古窯跡等からは、細く精緻な呉須線、巧みなダミさばきの良品の陶片が出土し、磁器生産の比較的早い段階での技術の熟達が窺える。
 本品「染付鶉文小皿」は、南川原の柿右衛門窯B出土の「染付若松梅花唐草文皿陶片」と裏の蔓草文や裏銘が一致し、その同手完品が柴田コレクション中にあることから、出土の地層に照らして延宝から天和にかけて(1680年前後)のものと判断できる。
 また、注目すべきには、本品が早い時期にヨーロッパに輸出された磁器の一つであるということ。染付磁器は壺、瓶などをはじめ数多いが、小品ではほぼ上手のものに限られ、それが、イギリスの貴族の館バーリーハウス蔵品中に認められるのである。素焼を施した素地に天然呉須で精緻な線描き、濃度を違えたダミを巧みに塗り分けてぼかし技法もみごとに駆使している。薄手で藍染を思わせるブルーの発色が美しく、素地の色は僅かに褐色がかり濁し手に似た風味もある。当時は、転写用に瓢箪墨の利用や、墨弾きといわれる特殊技法も開発された。
 しかるに、初期伊万里染付、藍九谷手、藍柿右衛門手なる流れの解明に当たっては、山下朔郎氏、小木一良氏らのご尽力もあってほぼ整いつつあるが、年紀のあるもの、
裏の文様・銘一致の陶片

裏の文様・銘一致の陶片

制作年が特定できるものを付け石に変遷をおさえた上での信頼すべきものさしの設定が急がれよう。
 なお、淡い調子の染付で薄づくりで端正な成形、軽やかで風雅な味わいの、”成化”官窯の模倣が流行。清朝雍正年間官窯などでも積極的に行われ、日本においても格付けを狙って「大明成化年製」と裏銘を入れることが約束事のようになった。


上野 憲示
上野 憲示

1948年、大阪生まれ。

東京大学文学部美術史学科卒業。栃木県立美術館学芸員。東京大学、清泉女子大学などの非常勤講師(美術史学・博物館学担当)を経て、現在、文星芸術大学学長ならびに芸術理論専攻教授。

著書に『鳥獣人物戯画(日本絵巻大成六)』(中央公論社)、『渡辺崋山の写生帖』(グラフィック社)、『ハイビジョン鳥獣人物戯画』(ハイビジョンミュージアム推進協議会)、おもしろ日本美術1(文星芸術大学出版)など、美術史家、美術評論家として活躍。


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