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おもしろ日本美術

おもしろ日本美術2 第十六回

余白の白さに映える定番の吉祥モティーフ

色絵双鳥松竹梅文七寸皿

色絵双鳥松竹梅文七寸皿

色絵双鳥松竹梅文七寸皿

 世の常として、ハレの儀式用の調度、器物には、めでた尽しというか縁起のよい吉祥画、吉祥柄が好まれるが、肥前磁器にあっても、山下朔郎氏らによって早くから「壽物(すもの)」といった吉祥のハレの器の観念の顕在が指摘されている。
 そもそも、日本の国づくりにあって先進国中国の慣習を導入しこれを風土や国民性に沿ってしだいに和風化する歴史が繰り返えされました。中国では古来、寒い冬場になおも緑の葉を輝かせる松と竹、そして酷寒の中高貴な白い花を咲かせる梅の松竹梅を「歳寒三友」として愛で、これを受けて日本でもまさしく正月の賀を彩る縁起物として確立した。伊万里では松竹梅を手軽な吉祥モティーフとして染付や色絵の絵模様に重用され、さらにはリング状に図案化されて、皿や鉢、向付などの見込におきまりのワンポイント・デザインとしても定着した。
 本作は、「典型的な柿右衛門様式」と呼び慣らす、濁手素地に赤・青・緑・黄・金の上絵具で余白を活かした非対称な構図で描いた色絵磁器の典型的な優品で、呼応する双鳥、主格の松、並行してしなる竹、対格の梅の枝振り、その足もとに太胡石といった図様である。バリエーションとして石を芝垣風の植込に差し替えた図様のものも知られている。型打成形の輪花皿で口銹が施され、20センチ前後の大中小の三枚セットで海外へ輸出されることも多かったという。
 ただ、本品に限らず、濁手磁器は、素地の色合いや釉薬の厚みや光沢、素地表面の平滑度等について微妙な差異があり、高台部の目跡の数や形状においても3つから、4つ・5つと数を増しより目立たなくとの配慮がなされたりと推移している。その量産の盛期も、近年の研究では、かつて言われた元禄半ばではなく延宝から貞享にかけての時期と考えるべきと指摘されている。(元禄期はむしろ金襴手に押された衰退期か)
 マイセンなどヨーロッパの窯では1730年ごろから盛んに柿右衛門色絵の倣製がなされたが、当時から現代まで受け継がれてきた柿右衛門写しの定番図様の筆頭は、まさしくこの「松竹梅」であり、「竹に虎」「梅に鶉」とともに今なお人気を博しているのである。
  • マイセン窯の倣製品

    マイセン窯の倣製品

  • 類似の柿右衛門色絵皿

    類似の柿右衛門色絵皿

  • 現代マイセンの柿右衛門写しのC&S

    現代マイセンの柿右衛門写しのC&S


上野 憲示
上野 憲示

1948年、大阪生まれ。

東京大学文学部美術史学科卒業。栃木県立美術館学芸員。東京大学、清泉女子大学などの非常勤講師(美術史学・博物館学担当)を経て、現在、文星芸術大学学長ならびに芸術理論専攻教授。

著書に『鳥獣人物戯画(日本絵巻大成六)』(中央公論社)、『渡辺崋山の写生帖』(グラフィック社)、『ハイビジョン鳥獣人物戯画』(ハイビジョンミュージアム推進協議会)、おもしろ日本美術1(文星芸術大学出版)など、美術史家、美術評論家として活躍。


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