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おもしろ日本美術

おもしろ日本美術2 第十八回

もともと西欧古代定番の葡萄リスが柿右衛門を介して逆輸出か

色絵葡萄栗鼠文皿

柿右衛門色絵葡萄栗鼠文皿

柿右衛門色絵葡萄栗鼠文皿

 マイセンやチェルシー、シャンティーイなどヨーロッパの伊万里写しの磁器に、葡萄の木に栗鼠、さらには天駆ける多尾の赤狐を配したデザインのテーブル・ウエアを見ることが少なくない。初源的デザインは、向付や蕎麦猪口の側面全周に描かれたものと思われ、これを展開図的に中皿に移し、紅い狐を上部の空間にはめ込んだ、葡萄棚の籬の下辺が直線的に断ち切られた図柄の倣製品が好まれたのであろう(写真 倣製品別タイプ)。
 本歌の柿右衛門窯の方でも、オリジナル・デザインの丸皿へのデザイン転用が試みられ、こちらは籬の下辺部を丸い縁に合わせて引き下げて本品の図様に落ち着いたのであろうか(一部、青竹の突出部分が屈折するなどの乱れあり)、この図様を忠実に写したマイセンやスポードの倣製品が知られている。
 そもそも尾の先が三鈷状に分かれ宝珠を保持した狐は、中世以降秘儀的信仰を集めた垂迹神ダキニ天の乗り物で、江戸時代初めの天海僧正の江戸を守る魔方陣配置の中でもクローズアップしてきたシンボルであった(のちに稲荷信仰にすりかわっていく)。これはとりもなおさず、磁器デザインの下絵制作に狩野派絵師などの専門画家が関わっていた証左となろう。なお、初期の輸出柿右衛門色絵「取手付瓢形水注」にも葡萄栗鼠文は散見するが緑のリスが描かれるのみで赤い狐は描かれていない。
  • マイセン倣製品

    マイセン倣製品

  • マイセン倣製品別タイプ

    マイセン倣製品別タイプ

  • 柿右衛門葡萄栗鼠文向付

    柿右衛門葡萄栗鼠文向付


上野 憲示
上野 憲示

1948年、大阪生まれ。

東京大学文学部美術史学科卒業。栃木県立美術館学芸員。東京大学、清泉女子大学などの非常勤講師(美術史学・博物館学担当)を経て、現在、文星芸術大学学長ならびに芸術理論専攻教授。

著書に『鳥獣人物戯画(日本絵巻大成六)』(中央公論社)、『渡辺崋山の写生帖』(グラフィック社)、『ハイビジョン鳥獣人物戯画』(ハイビジョンミュージアム推進協議会)、おもしろ日本美術1(文星芸術大学出版)など、美術史家、美術評論家として活躍。


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