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おもしろ日本美術

おもしろ日本美術2 第十七回

柿右衛門は染錦手でも違いを示す

染錦粟鶉籬籬文八角小皿

染錦粟鶉籬籬文八角小皿

染錦粟鶉籬籬文八角小皿

 5人前、10人前、20人前等、揃いものから分かれた染付・上絵併用の色絵皿で、いわゆる染錦手の優品。
 初めのデザインは竹垣が8時の位置にあって赤い雌鶉の体と竹の先が重なりやや窮屈な印象ゆえ、まもなく本作のように左の竹垣を9時の位置に修正したものと思われる。裏の染付文様(おもだか三葉+左右蔓唐草)や裏銘(「古之人」)から南川原の柿右衛門窯の作であろう。類似品に柴田コレクション図録X−173の「色絵団龍牡丹唐草文八角皿」(併用型色絵で染付)がある。
 本品は染付と上絵のバランスが絶妙で、釉下の染付に細かな神経を注ぎ、染付の線描、点描表現やダミの妙は秀抜。点描による巧みな体のふくらみ表現、ダミ筆による濃淡、ぼかし表現など高度なテクニックが窺え、延宝年間、鉄分を除去した上質の磁土(泉山の良質の磁石単品か)の精錬が可能となって頂点に達した色絵技術の到達点と言えよう。一部に控え目に金彩を施し、西欧好みの高雅なポーセリンの冴えを示している。
 柿右衛門家では、九谷様式の染付(藍九谷)の後を受けてより日本的な感性を取り込んだ染付(藍柿右衛門)を展開し、並行して色絵(赤絵)の完成にむけ技術革新がなされる。トレードマークともなったそして濁手の素地にベンガラの朱など明るい色調の上絵具による余白を活かした非対象構図の赤絵の誕生である。また、早くから錦手と呼ぶ染付併用色絵も手掛けており、その完成度も高かった。
 すなわち、1)染付主調の中に赤・緑・黄などで少々の彩色を添えたもの。2)青色は釉下の染付と割り切り、計画的に配置(金彩付加も)したもの。3)染付は単にリング線と裏銘、裏文様にとどめ限定的なもの。4)染錦にさらに大部の金彩を施したいわゆる金襴手と称するもの、と多彩である。
 柿右衛門窯のこの染錦手の名品、「染錦三果文皿」の一例に裏銘に「延宝年製」とあることから、類品も同時期をそう下らないころの作とされ、同意匠の濁手色絵皿、染付皿の存在も知られ、同時並行的な展開が興味深い。  
  • 色絵団龍牡丹唐草文八角皿

    色絵団龍牡丹唐草文八角皿

  • 柿右衛門手「三果文皿」三様

    柿右衛門手「三果文皿」三様


上野 憲示
上野 憲示

1948年、大阪生まれ。

東京大学文学部美術史学科卒業。栃木県立美術館学芸員。東京大学、清泉女子大学などの非常勤講師(美術史学・博物館学担当)を経て、現在、文星芸術大学学長ならびに芸術理論専攻教授。

著書に『鳥獣人物戯画(日本絵巻大成六)』(中央公論社)、『渡辺崋山の写生帖』(グラフィック社)、『ハイビジョン鳥獣人物戯画』(ハイビジョンミュージアム推進協議会)、おもしろ日本美術1(文星芸術大学出版)など、美術史家、美術評論家として活躍。


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