アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「地域レポート」No.21

大谷石採掘場跡地で『鉱毒悲歌そして今』を上映

岩盤の天井に投影、寝そべって鑑賞-宇都宮共和大学の研究室が企画-

宇都宮市の大谷石採掘場跡地で、足尾鉱毒事件を題材にした記録映画『鉱毒悲歌そして今』を岩盤の天井に投影し、寝そべりながら鑑賞する上映会が開かれた。大谷地区の景観維持や採掘場跡地の利活用に取り組んでいる宇都宮共和大学シティライフ学部の西山弘泰研究室が企画したもので環境教育の一環として同大の学生20人ほどが参加。上映後、鉱毒悲歌制作委員会代表の谷博之さんと環境や公害問題について意見交換した。

会場は採掘場跡地の空洞。鑑賞用のエアベッドが敷かれ、新型コロナウイルスの飛沫感染防止のビニールシートが設置された。この企画の中心メンバーで「コロナ禍の観光」を卒論のテーマとした同学部4年の松岡匠さんは「大谷の観光を盛り上げることがゼミ活動の柱にある。大谷石の天井に映像を映し出し寝そべりながら鑑賞するという真新しさ、上を向いている状態なら飛沫の影響も少ない、飛沫防止対策にもなるのではないかと考えた。大谷観光の新しい可能性として、感染防止をした上でイベントを企画した」と話した。

会場の大谷石の天井

西山ゼミの4年生たち

イベントの中心となった4年生の松岡匠さん


上映会は昨年実施する予定だったが台風19号により大谷地区は大きな被害を受け、延期されていた。「学生の上映会を実現させたいという強い想いがあった。このイベントには大谷石採掘跡地の利活用を提示するという社会実験的な意味がある」と西山先生。

上映後の意見交換では、谷さんが足尾の公害の歴史を解説したうえで、「今の公害の最大の危機的問題は放射能公害。世界で唯一の被爆国であるにもかかわらず日本では平和利用として原子力発電が使われているという世の中の矛盾、そういうところまで目を向けていかないと公害問題の本当の解決には結びついていかない」と学生たちに語りかけた。

実習で足尾の植樹ボランティアに参加した学生からは「映画の中では関係者の尽力によって足尾に緑が回復している様子が紹介されているが、実際に足尾に行ってみると公害の爪痕が目に見える形で残っている。山肌がむき出しになっている状態。足尾で起きたことの悲惨さを身をもって体験した。足尾に緑を育てる会の活動の中心になっている人たちは高齢化が進んでいる。僕たちの世代、若い人達が活動を引き継ぐことが課題になっている」との意見が出された。

学生の指摘に谷さんは「足尾に緑を育てる会は毎年1万本ずつ植樹をして、100年たったら元の足尾に戻す計画。まだ、目標の5分の1くらい。仮設の階段をつくり高い所に苗木を背負って登っていくのですが、高齢者にはそういう活動が厳しい状況にある。映画の最後のシーンにありますが、植樹祭には若い人たちもたくさん来てくれている。ぜひ若い方が積極的に参加してほしい。『足尾』との距離を近くするためにも、そんな活動を検討していただければありがたい」と応えた。

西山研究室はこれまで、大谷地区の景観維持のための草刈り活動や「大谷景観復活プロジェクト」の一環で大谷石採掘場跡地を利用しての「ビアガーデン&ジャズコンサート」などを開催してきた。この10月に開催された「フェスタin大谷」では宇都宮市の若山農場とのコラボレーションでモウソウ竹のイルミネーション「竹灯籠」を設置し、大谷のにぎわい創出に貢献している。

右から谷さん、西山先生、松岡さん

挨拶する西山弘泰先生

上映後の討論会

谷博之さん

話しをする足尾の植樹に参加した学生

機材協力でサポートしたリコージャパン㈱栃木支社のスタッフ