アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「地域レポート」No.6

フードバンク宇都宮 -とちぎボランティアネットワーク-

「食料品を無償で寄付してもらい、必要な人や施設に無償で配る」活動である「フードバンク」。アメリカ発祥の取り組みで、日本にも広がっています。栃木県では、NPO法人とちぎボランティアネットワークが2010年に発足させました。専従で運営にあたる徳山篤さんにフードバンクについて聞きました。

―「フードバンク」とはどういうものなのか、教えてください。

賞味期限、消費期限がまだ残っていて食べるのに何の問題もない食べ物が、日本では毎年500~800万トン廃棄されています。それがどれくらい凄い量かというと、日本で一年間に生産されるお米が850万トンですから、食べられるのに捨てられている食品がいかに多いかがわかると思います。非常にもったいないし、産業廃棄物として処分しているわけですから、お金のコストもかかるし環境にもよくありません。

一方では、生活困窮者の数が増えています。生活保護受給者の推移を見ると、その数はうなぎ上りに増えています。それは貧困者が増えているということでもあります。生活に困窮している人が約1000万人いて、そのうち生活保護受給者は2割程度といわれています。車や家、土地などを持っていることで生活保護が受けられなかったり、あるいは世間体を気にして受けないということで、苦しみながら生活している人たちも多いのです。

そういう状況の中で、余っている食べ物と生活に困っている人たちをつなぐ仕組みがフードバンクです。原則は、食品を無償でいただいて無償で生活に困っている人や福祉施設などにお渡しします。

―食品を寄付していただくのは、食品会社ですか

会社も多いですし、あとは個人からです。私たちが重要視しているのは、フードバンクという仕組みに多くの方に関わっていただきたいということがあります。自分の家を見渡して買ったけど食べないでいるというものを寄付していただくということで、フードバンクの仕組みにみんなでかかわって貧困問題に取り組んでいきたいと思っています。

―どのような会社が関わっているのですか

地元の会社も何社かあるのですが、ある程度大きい食品会社になると東京に本社があり、営業所とか支店、工場などに直接行っても本社決済というようなことになりますので、なかなか地元では難しい問題があります。

日本で初めてフードバンクをNPOで始めたセカンドハーべスト・ジャパンという団体があります。その団体は東京にあって、情報も東京に集中していますから、いまのところはメーカーの大半がセカンドハーべスト・ジャパンさんに打診して、寄付するという状況にあります。我々もセカンドハーベスト・ジャパンさんのネットワークに入っています。全国のフードバンク団体にセカンドハーべスト・ジャパンさんから、「こういう食品が入っていますが、どれくらい受け取れるか」打診のメールが入ります。飲料であれば700本、800本という単位で、要するにパレット(積み込む単位)で打診があります。「宇都宮では何パレット受け取れます」と返信しますとセカンドハーべスト・ジャパンさんのほうで割り振りをして、直接こちらに届けてくれます。それを、私たちが必要とする人や施設に届けます。いまは、こういうケースが多いですね。

―届け先は、フードバンクで探すのですか。あるいは希望者から連絡を受けてということですか

最初は、フードバンクの存在はまったく知られていませんでしたから、こちらが持っているネットワークの中から、食事を提供している福祉施設を中心に打診して、「受け入れますよ」というところにお配りするということから始めました。

―福祉施設は、それを用いて調理をするのですね

基本的に経済状態の比較的苦しいところをピックアップしてお配りしています。そのことによってその分、食費が浮きますから、浮いた分を何か違うところに使うことができます。特に、お子さんを預かっている施設などですね。最近は個人の方への配布も多くなっています。

―フードバンクの活動経費はどうしているのですか

無償でいただき無償でお渡ししますので、フードバンクの事業からは収益は生まれてきません。寄付や助成金頼みなのです。ですから、いろいろな人にフードバンクを知っていただいて、応援してくださる人をたくさんつくっていきたいと思っています。

行政としてのセーフティネットは当然必要なのですが、行政のセーフティネットはどうしてもきっちりしたところがあるので、基準のラインからギリギリでも外れていれば苦しくても助けてもらえないという側面があります。そういう隙間をカバーするために民間のセーフティネットが必要だと思っています。

例えば、失業して1か月後に運良く仕事が見つかったとしても、その1か月は無収入状態。仕事をしても収入が入るのは、その月の末か、最悪翌月の末になってしまうと、3か月くらい無収入状態。貯蓄が少ない人は、3か月無収入で暮らすのは厳しい。じゃあ、生活保護かというと、仕事が決まっていれば受けられない。貸付金などの制度はありますが、食べ物で何とかクリアできるというのであれば、フードバンクを利用して、その場をしのぐことができます。

―ありがたいですね。特に、女性にとって、とてもありがたいことだと思います

母子家庭などで困窮されている方は、たぶん、多くいらっしゃると思いますが、個人情報の問題もあるし、たぶん、プライドの問題もあるでしょう、意外に、女性の利用は少ないですね。

―受け取る食品の条件は

基本的に常温で保存できて2週間から、理想を言えば、一か月程度賞味期限があるものです。ストックしておいて、訪れてきた人にお渡しできるというのが理想かなと思います。

―広報活動は

年2回、食料品を持ち寄ってもらう「フードドライブ」(車を運転して食べ物を持参する意味)を開催しています。そのほか、いろいろな集まりの中で、フードバンクのお話をさせていただいています。

フードバンクというものは社会的にも意義があるし、これからますます活動の場が増えていくと思っています。

 

取材に伺った日も、宇都宮市のとちぎボランティアネットワークの事務所で勉強会がありました。同ネットワーク事務局長の矢野正広さんが、東日本大震災の被災地でのボランティア活動の進め方などについて話しをし、その後、徳山さんがフードバンクについて話をして協力を求めました。

「フードバンク宇都宮」の徳山さん

食品を寄贈した若者

積込作業

積込完了

「Vネットとちぎ」事務局長の矢野さん

勉強会の参加者とともに話し合う

「フードバンク」チラシ

生活保護受給者数の推移

特定非営利活動法人 とちぎボランティアネットワーク フードバンク宇都宮

宇都宮市塙田2-5-1 共生ビル1階

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