アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「地域レポート」No.8

大谷石採掘跡の幻想的な地下空間で、地元アーティスト応援イベント -「下野樂藝舎」-

地元のアーティストを応援しようと、様々な職種の人たちが集まって「下野樂藝舎」を立ち上げ、初のイベント「今を生きる 宇宙に届け 大地の魂」を大谷石採掘跡の幻想的な地下空間で開く。

出演は、ゴスペルのHeaven’s Joy(ヘヴンズ・ジョイ)代表 佐藤夏織、オカリナのツルタ ハル、一人芝居の鵜飼雅子(脚本・片岡友美子)。

会場となる栃木県宇都宮市の大谷石採掘跡(大谷資料館)は、地下30メートルに2万平方メートルの空間が広がる。地下神殿を思わせる幻想的な雰囲気がクリエイターたちを引きつけ映画やドラマ、プロモーションビデオの撮影やファッションショーなどの舞台として使われてきた。東日本大震災後、一時休館になったが2013年4月、新オーナーのもとで再開された。

今回の企画は、下野樂藝舎代表で通信機器などの設計・施行を営む野添透さんが「この地下空間にキャンドルを灯して、ゴスペルを聞きたい」と知人で今回のイベントの実行委員でもある飯田国夫さんに何気なくつぶやいたことがきっかけだったという。「大震災前からやってみたいという思いがずっと頭の中にありました。大谷資料館が再開されたことを聞いて、ぜひ実現したいと思った。大谷の地下空間の魅力をたくさんの人に知ってもらいたい」

出演者の一人、オカリナ奏者のハルさんは結婚を機に音楽から離れ子育てに専念していたが、2013年から音楽活動を再開した。「大谷の地下空間には前から興味がありました。出演のお話をいただき、喜んでお引き受けしました。ふだんは、ギターやピアノの伴奏がありますが、大谷の地下では絶対、ソロで演奏してみたいと思いました。あの空間で、オカリナの音色がどんな響きをするか、とても楽しみです」

益子町で花火工場を経営する飯田さんは、野添さんら有志とともに東日本大震災後、被災者を元気づけようと、毎年、宮城県気仙沼市で花火を打ち上げ、栃木からの応援バスツアーを実施してきた。

「震災直後、泥とがれきに覆われた町に立って、生きるものの声や音、気配さえ感じない静けさに身震いした。それでも、あの日から被災地は着実に復興への歩みを一歩ずつ進めている」。復興への思いは、今回のイベントのテーマ「今を生きる」にも込められた。

野添さんは「今生きている、この瞬間に感謝できるように。そして、今回のイベントはアーティストと実行委員会側の間に壁を作らず、想いに賛同したみんなが一緒に手づくりでつくり上げることが目的。それまで知らなかった人が、イベントを通して知り合い、共に同じことができる、人とのつながりにも感謝したい」と話す。

今年の気仙沼の花火は3月21日に実施された。「風も穏やかで例年以上の人出でした。今回初めて海上の船から花火を打ち上げ、海面に映る美しい花火を楽しんでもらえた」と飯田さんは話す。

「みんなが一緒になって空を見上げ花火を楽しむことで復興に向かって元気になっていただきたいという思いで続けてきました。今回の大谷でのイベントでも、日常とは違った異空間に身を置き、日頃なかなか触れることのできないアートを体験することで、何かを感じていただけたらとの思いがあります。県内外を問わず多くの方に来ていただきたい」

主催実行委員・野添透さん

主催実行委員・飯田国夫さん

オカリナ奏者 ツルタ ハルさん

ゴスペル・Heaven's Joy

1人芝居 鵜飼雅子さん

3人のインタビュー

下野樂藝舎

問い合わせ先

090-8727-0919(野添)

090-3680-8382(鵜飼)

Fax 028-601-8847