アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「ナイジェリアの太陽」No.20

野生動物保護地域

ナイジェリア北、ゴワルゾー村にあるフランスの会社居住地区に住む私たちのところから400キロほど南東にあるナイジェリアで一番大きい野生動物保護地域(後のYankari National Park)に行った。今のように観光地化のための設備が整っていない頃であった。広さは2250K㎡もありほぼ東京都(2190K㎡)くらいある。緑が深く川があり、後になって溢れ流れる温泉が目玉となり観光宿泊施設などが整えられたようだ。

夫と会社の仲間たちと一緒に行き現地のガイドと合流。緑の多いサバンナを車で走行した。とはいっても柵があるとか入り口があるわけではない。そのまま続いている原野を走っていくのだが、うっそうとしたジャングル地帯もあり、こんな所で野生動物と出会うなど考えられないほど視界が悪い。ガイドが直径1m位のくぼんだ泥地を指して「これは何でしょう?」と問う。誰も分らなかった。「これは塩の沼地で動物たちが順番に塩を舐めにきます」。その近くで足跡を見つけ、「昨日は〇〇が通った」などと説明する。何の動物がいつ頃通ったかなどを足跡を見つけるとすぐに教えてくれた。私たちには大きな猫科のような動物であることだけしか分らない。

突然ガイドがシーッと合図し「あそこに象がいる」と、言われた方を見るが何にもいない。よくよく見ると遠くの大木の陰に隠れて顔を半分くらい出して私たちをジーッと警戒しながら見ているのが分った。動物園の象のように人がいてガヤガヤしていてものんびり餌を待っている象とは違う。目が鋭く身体を隠し警戒心が伝わってきた。人間は私たちだけ、彼らのテリトリーに入ってきたのだ。ガイドは「象を見るのは難しいことです。今日はあなたたちはついていますよ」。そしてびっくりしたのは象の小山のような糞だった。あの体だから当然。

それにしても、一歩車から出ると無数のアブに体中を刺される。そのために絶えず身体を動かしてみんなでダンスをしているようだった。1匹でも痛いのに、追いかけてくるアブの大群に攻められ、みんな「痛い、痛い」と大騒ぎ。ガイドは平気でいるので、なぜ刺されないのか?彼らの身体能力は私たちと異なりアフリカの大自然の中を生き抜く高い身体能力を有しているが、虫にさされないこともそうだったのか?車を時速40キロ以上出すとアブはついてはこない、それ以下にすると追いつかれ、外に出るとブスブスと刺されてしまう。

アブ・ハエ・蜂、その他得体の知れない昆虫類がたくさんいる。後にアフリカの記録映画などを見ると、いつも思い出すのはこの虫やアフリカの赤い大地の独特の臭いだ。

動物保護地域にあるぬるめの温泉が川になって流れている

温泉の前で。友人が入っている

夫アンリーと一緒に温泉近辺での食事後

大滝に圧倒!

どのくらい大きいか、夫が滝の裏側に行った

(つづく)

TOMOKO KAZAMA OBER(トモコ カザマ オベール)

TOMOKO KAZAMA OBER(トモコ カザマ オベール)

1975年に渡仏しパリに在住。76年、Henri・OBER氏と結婚、フランス国籍を取得。以降、フランスを中心にヨーロッパで創作活動を展開する。その間、78年~82年の5年間、夫の仕事の関係でナイジェリアに在住、大自然とアフリカ民族の文化のなかで独自の創作活動を行う。82年以降のパリ在住後もヨーロッパ、アメリカ、日本の各都市で作品を発表。現在、ミレー友好協会パリ本部事務局長。

主な受賞

93年、第14回Salon des Amis de Grez【現代絵画賞】受賞。94年、Les Amis de J.F .Millet au Carrousel du Louvre【フォンテンヌブロー市長賞】受賞。2000年、フランス・ジュンヌビリエ市2000年特別芸術展<現代芸術賞>受賞。日仏ミレー友好協会日本支部展(日本)招待作家として大阪市立美術館・富山市立美術館・名古屋市立美術館における展示会にて<最優秀審査賞>受賞。09年、モルドヴァ共和国ヴィエンナーレ・インターナショナル・オブ・モルドヴァにて<グランプリ(大賞)>受賞、共和国から受賞式典・晩餐会に招待される。作品は国立美術館に収蔵された。15年、NAC(在仏日本人会アーティストクラブ)主催展示会にて<パリ日本文化会館・館長賞>受賞。他。