正月は箱根駅伝にラグビーと学生スポーツ花盛りであった。録画した箱根駅伝を繰り返し、しかも早送りで見るという変な友人もいるが、次走者にタスキを渡す使命を担った選手たちが、疲労困ぱいの極みで次々と中継所に倒れ込む姿は、確かに何とも言えない。
ラグビーも一方的なゲーム展開になると、形勢不利なチームの選手たちの表情に味が出てくる。そしてノーサイドの瞬間、互いの健闘を称え合う姿がまた麗しい。
翻ってわが国。来年度予算は92兆円。大半が借金である。そのツケが次世代に何をもたらすか。財政規律を失った、と言われるが、倫理観を失った国も、予算なる金の奪い合いに狂奔する国民も土砂崩れ状態で歯止めがかからない。身近な医療機関を守るためコンビニ受診を控えようといった掛け声もなく、いつでもどこでも最高の医療を求める権利ばかり主張し、万事において今の日本には遠慮がちな「タスキをつなぐ」という発想が薄い。
こうした傾向は、思考回路の停止、或いは思考渋滞と言ってよく、心身ともにお疲れモードの典型的な症状である。何を考えても堂々巡り、焦りばかりで先に進めない。わが国の経営状態は病気か、堕落か、爛熟か。
箱根路で先を行く走者を、あるいは芝の上でディフェンスラインをごぼう抜きする元気な学生たちを見ていると、国の熟年高齢のトップたちよ、いい加減にタスキでもボールでも若者たちに渡してしまえと言いたくなる。
「おらは死んじまっただ~」の北山修博士はある講演で、最近の医者は芸がないと嘆いておられた。私たち医師も政治家と同様、言葉というタスキで患者さんの心をつなぐ訓練と用心深さが必要なようである。
冬のハートインクリニック