コロナで中止となった全国花火競技大会「大曲の花火」が予定の8月29日に無観客で行われNHKが中継した。ゲスト出演した俳優の柳葉敏郎は大曲近在の出身、角館高校卒で、花火に詳しい。その彼が、全国28業者による28発の後、7年前60歳で逝った津雲優が歌う『いざないの街(秋田県民歌入り)』にあわせたフィナーレの10号玉30連発にむせび泣いた。僅か30分の打ち上げだった。
話は変わる。私たちサンバ打楽器隊バテリアはJR八郎潟駅前交流館ハチパルを会場に10年前から一日市盆踊り(8月15~17日)の前夜祭を自主運営してきた。だがコロナで今年の盆踊りは中止。それでも前夜祭をやるか、やめれば何も考えなくて済む、やるなら「密」対策を如何にと悩んでいた7月、第2波である。首謀者の歯科医もメンバーも家族が渋顔になってきた。彼はひるまない。壁一面が引戸のハチパルホールにステージを設営、出演団体以外はホール立ち入り禁止、客は外、団体の数と人数と時間は例年より減、客席も減、出演者も客もマスク、宣伝はしない…。が、盆前、秋田にもクラスター発生、病院勤務の看護師は職場命令で不参加表明、この10年で演奏ミスからの立ち直りだけうまくなったと苦笑するバテリア指導者も「中止、ありか」とつぶやく。だが歯科医は、危険を承知ではなく、あくまで『3密』対策の徹底だと歯をくいしばる。
8月15日夕刻、2名のシンセ演奏で前夜祭は開演した。客はまばらである。来日2年目のベトナム人研修生タン君が美しい日本語で歌謡曲を披露。女性2名のボリビアダンス、オカリナ演奏、フラダンスと続き、7名の格闘家によるカポエラ(ブラジルの伝統的踊り技)の伴奏で例年の半数9名でバテリアが登場。激しいカポエラが終わり、ダンサー抜きのサンバ演奏が華々しくトリを飾った。大きな拍手と声援。体もマスクも汗ぐっしょりである。
やがて「自粛にも息抜きが必要だ」とこの企画に連動した八郎潟『花火あげ隊』による花火が夜空を彩った。彼らは30万円を目標に寄付を募り、結果は100万円超、10分の予定が30分となった。飲酒の場が最も危険と慰労会は中止、帰って一杯と車に乗った夜9時、周辺は大渋滞である。コロナを理由に安易な企画中止が相次ぐ今、みなイベントに飢えているのだ。用意周到だった大曲の無観客花火はその2週間後であった。
ボリビアダンス
カポエラ(右端が首謀者、隣のスルドは筆写)
サンバダンサー抜きのバテリア(筆者の楽器はアゴゴ)
ハートインレター51(佐々木かなえ)