医療関係者への新型コロナワクチン接種は遅れに遅れている。あの大阪市のど真ん中で開業している自治医大同期は、「3月に入ってコロナ疑い受診が激増し、連日のPCR検査。ああ、それなのに自分のワクチン接種はやっと4月22日だった」とぼやいていたが、私も4月25日に初回を済ませた。
5月1日、今度は私を含む医師3名で住民に集団接種である。3月の模擬演習を教訓に余計な問診はしないと決意し、医師ブース3つの1つで待ったが住民はなかなか来ない。スタッフの市職員らに尋ねるとやはり受付で予診票確認に手間取り、次の保健師の問診でも渋滞という。やっと現れた住民に「お疲れさま。ここまで受けた説明に納得してワクチンを受けますね?」と念を押すとハイと頷き、そのまま注射担当の看護師へ回す。簡単すぎる問診を怪しみながらもスタッフは他のブース前から次々と私の方へ住民を誘導する。隣の医師は、今日の体調はどうか、アレルギーはないかなど受付・保健師と同じ丁寧な質問をしていた。あまり感心しないが、恐らく5割方は私がこなしたことになる。
しかし、予診票の署名には参った。ハンコの省略は大いに結構だったが、いかにも書類大国ニッポンらしく1枚の紙に署名は2カ所に必要で、私の姓名の画数は37画もあり、これが約50名だから苦労である。その数日後、飲み友の家に新型コロナが発生した。里帰り出産の娘が東京から持ち込んだもので、本人も親夫婦も即入院。やがて娘は児への感染予防のため帝王切開で出産した。友にメールで児の命名を問うと、娘の夫の父親が決めたといい、何と48画。押印廃止・署名時代にえらいこっちゃ。
欧米人の名前は、例えばアンリやミシェルなど、失礼ながら単純明快である。印ではなく署名の文化だったことも理由ではあるまいか。ともあれ米国のワクチン接種は凄い。大リーグの球場に訪れた観客にサービスで接種している。これくらい大雑把にやらないと集団免疫の獲得は難しそうだ。
2021/5/12
阿仁川の桜(北秋田市阿仁合)
鳥海山と菜の花畑
今年も竿灯はコロナで中止か…(秋田市大町竿灯大通り)
ハートインレター58
写真撮影:大日向かなえ