アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「精神科医のニア・ミス」No.122

暑い夏とコロナ ~土崎港祭り2022~

日曜朝7時から1時間余り、80歳前後のテニス仲間と秋田山王テニスクラブのインドアコートで朝練を10年以上続けている。盆前のある日、77歳のおじさまが嬉しそうにぼやいた。「昨日3年ぶりにイギリスから娘とやってきた孫に驚いた。最後に会ったのは12歳の時で、顔は私によく似ているとひそかに思っていたのだが、15歳の今はもう背が伸びて鼻もツンと高くなって、ベルギー人の父親そっくり。3年のブランクは大きい」

こんな話はコロナの時代になって患者からもよく聞く。3年も会わなかった外孫は小学5年から中学2年になり、あの甘えん坊が体格も喋ることもすっかり大人びちゃって…という訳である。それでなくても子供は中学生になると部活などで交友関係が拡がり、親の実家を訪ねる機会も減りがち。疎遠になった孫に「ご無沙汰ね」とつい漏らしてしまう事情が、コロナで強制されてしまった。

昔、当クリニックで小中学校の養教(養護教諭)10名による『愚痴こぼし会』を2年間やった。扱いに困る生徒の事例を出し合い、解決には至らなくても話題にすることで気が楽になればと小児科医と精神科の私が企画した。問題児は担任の手に負えないと学年主任、教頭の手へと渡り、最後は養教。養教には後がない。愚痴の一つもこぼしたくなる。会は評判になり参加希望も増えたが、多すぎると発言しにくくなると人数は制限した。小学校から中学校へ進む事例の引継ぎの場にもなった。ある養教は「卒業まで散々てこずらせておいて、成人してばったり出くわすと、先生、お元気でしたかなんてケロッとしてー。変化のない大人と違って子供は20歳まで成長を続ける」と口にしていた。

3日見ぬ間の桜かな。本川達雄先生の「ゾウの時間・ネズミの時間」によれば、ゾウもネズミも生涯の心拍総数は同じで、機敏さが勝るネズミはゾウより寿命が短い。この伝で行くと、ネズミの時間を生きる孫と、ゾウの時間を生きる祖父母を3年も会えなくしたコロナは罪が重い。ある芸文協会長は「文化祭を2年間休んだら半数の団体が解散していた。感染を恐れて高齢者の行事を中止したことは取り返しがつかない」と悔やむ。2022/8/27

阿弥陀池1530㍍(秋田駒ケ岳1637㍍ 7月30日)

一日市盆踊り前夜祭・サンバチームとカポエラ隊
(八郎潟町・8月17日)

孫(-)院長のサンバ友コータとヒナちゃん

雨に祟られながらもさすがだった大曲の花火(大仙市 8月27日)

22-08-30 レター72A

尾根白弾峰

尾根白弾峰(佐々木 康雄)

旧・大内町出身 本荘高校卒

1980年 自治医大卒

秋田大学付属病院第一内科(消化器内科)

湖東総合病院、秋田大学精神科、阿仁町立病院内科、公立角館病院精神科、市立大曲病院精神科、杉山病院(旧・昭和町)精神科、藤原記念病院内科 勤務

平成12年4月 ハートインクリニック開業(精神科・内科)

平成16年~20年度 大久保小学校、羽城中学校PTA会長

プロフィール

1972年、第1期生として自治医科大学に入学。長い低空飛行の進級も同期生が卒業した78年、ついに落第。と同時に大学に無断で4月のパリへ。だが程なく国際血液学会に渡仏された当時の学長と学部長にモンパルナスのレストランで説教され取り乱し、パスポートと帰国チケットの盗難にあい、なぜか米国経由で帰国したのは8月だった。

ところが今の随想舎のO氏やビオス社のS氏らの誘いで79年、宇都宮でライブハウス仮面館の経営を始めた。20名を越える学生運動くずれの集団がいわば「株主」で、何事を決めるにも現政権のように面倒臭かった。愉快な日々に卒業はまた延びる。

80年8月1日、卒業証書1枚持たされ大学所払い。退学にならなかったのは1期生のために諸規則が未整備だったことと、母校の校歌作詞者であったためかもしれない。

81年帰郷、秋田大学付属病院で内科研修を経てへき地へ。間隙を縫って座員40名から成る劇団「手形界隈」を創設、華々しく公演。これが県の逆鱗に触れ最奥地の病院へ飛ばされ劇団は崩壊、座長一人でドサ回り…。

93年に自治医大の義務年限12年を修了(在学期間の1倍半。普通9年)。2000年4月、母校地下にあった「アートインホスピタル」に由来した名称の心療内科「ハートインクリニック」開業。廃業後のカフェ転用に備え待合室をギャラリー化した。

地元の路上ミュージカルで数年脚本演出、PTA会長、町内会や神社の役員など本業退避的な諸活動を続けて今日に至る。

主な著作は、何もない。秋田魁新報社のフリーペーパー・マリマリに2008年から月1回のエッセイ「輝きの処方箋」連載や種々雑文、平成8年から地元医師会の会報編集長などで妖しい事柄を書き散らしている。

医者の不養生対策に週1、2回秋田山王テニス倶楽部で汗を流し、冬はたまにスキー。このまま一生を終わるのかと忸怩たる思いに浸っていたらビオス社から妙な依頼あり、拒絶能力は元来低く…これも自業自得か。