今年で終了の住民総参加型スポーツ企画『チャレンジデー』の5月31日朝、わが自治会館の駐車場に住民25名が集まった。絶好のラジオ体操日和。6時半、ラジオから「新しい朝が来た~」と流れる筈が突然「北朝鮮がミサイル発射、北朝鮮がミサイル…」と緊急ニュースである。ミサイル避難訓練は昨年ここで行った。地下室や頑丈な建物が付近にない場合は家から出ないことと消防署員から教わっている。だが今日のミサイルは沖縄方面とラジオは言う。仕方がないので私たちは声のピアノ伴奏でラジオ体操第1を始めた。
行きつけの床屋が2年前「うちの町内、どうしても会長が決まらないので自治会を解散することになりました」という。面白い。散髪の度に聞く後日談は以下の如し。市広報の配布は、ある住民に自治会が年3万円で委託していたのを市が同額で継続委託。自治会助成金の消滅で市の懐は痛まない。赤い羽根や緑の羽根、社協、日赤、交通安全協会など自治会が代行していた寄付集めは各団体に返上。運動会や夏祭りなど各種行事は廃止。ごみ集積所は隣近所やマンション毎の管理なので自治会は関係ない…。
昨年3月、6年間も務めたわが自治会長がついに退任した。床屋の町内同様、喜んで会長になる人物はいない。そこで会長は、過去14年連続で副会長だった私を後任に指名。覚悟していた私は総会で2つの条件を出した。今後は任期2年を1年へ、会長も含む役員を輪番制へ移行するー。かくて昨年度は市役所の下請け的業務や会議は積極的にさぼり、各種寄付の額と手続きを大胆に見直し、コロナ禍で行事が減り余っていた金で自治会館の泥んこ駐車場を舗装、どこの町内もやっていない津波・ミサイル避難訓練、防災器具取り扱い訓練を2回。が、1年ぽっきりの会長、アイデアは出すが段取りと実施は副会長ら役員任せ、本人はあまり汗を流していない。
今年3月に私は会長を卒業、昔ながらの談合で次期会長を推薦し総会で了承された。重い宿題を背負った新会長は就任の挨拶で来年度からの役員選出方法を説明した。町内全9班を4グループに再編し、各グループは1年毎に話し合いやくじ引きで会長など役員8名を決め、その8名は今年度の諸会議にオブザーバー参加する。昨年は「まじ?」といった雰囲気だった総会の場に当惑の色が広がった。
5月初旬、最初のグループ25戸から12名が出席して来年度の役員選びである。もめた。仕事が忙しくて町内のことなど絶対に無理、そんな暇があったら釣りに行くという者もいる。互いに警戒し沈黙。ついに釣り男が「葬式みたいで嫌だな。いいよ、俺が何か簡単な役をやる」と言い出す。「私にお手伝いできることがあれば」と元教師。引きこもりではないかと噂のあった人も手を上げ、今日欠席した息子に何かやらせますと商店の社長がいい、隣の町内の役員で母親が施設にいる息子が「会長以外なら私も」という。だがその会長が決まらない。
月末に2回目の会合が開かれた。定年退職後で暇だろうと思われていた自治会の元会計は内々の要請を拒否していたが、「このシステムだと4年後にまた役員が回ってくる。自分たち夫婦は4、5年後に東京へ引っ越す予定なので会長を引き受けるなら来年しかない。私でよければ」とついに会長が決定。英国式「影の内閣」シャドーキャビネット誕生である。人材発掘となった初の試み、8名の表情は心なしか自信に満ちていた。やればできるのだ!
十ノ瀬藤の郷(秋田県大館市)
鳥海山とルピナス(秋田県)
鳥海山と熱気球(横手市)
最後のチャレンジディ(潟上市上町)