パリに住むピアニスト、千田桂大君から電話があった。彼は、親日家で著名なマエストロ、エリック・ハイドシェック氏の内弟子として3年前から特訓を受けている。毎朝2時間の散歩にもお供し、パリの街に詳しくなった。昨年はバルセロナの国際ピアノコンクールで2位。
マエストロは東日本大震災の報に接するや直ちにヨーロッパ各地でチャリティコンサートを開始、今も続けている。「普段はビジネスクラスで移動するのに、今回は支援だからエコノミーと言うのです。本当に尊敬します」5月14日にパリのユネスコ本会議場でサルコジ大統領らフランスの名士を前に先生のお相伴で演奏する、とても緊張しているという23才は、私の近所出身だ。
世界中の芸術家、文化人が支援の輪を広げている。一方、秋田でも医師会から町内消防団まで大勢の人が被災地へ駆けつけた。帰って来た彼らは現地の惨状も口にするが、住民たちが声を揃えて「あなた方の元気な姿に勇気づけられる。私たちが見放されていないと確信した」と述べる言葉が印象的だったという。
秋田に避難してきた人々もいる。関係者によれば、到着した当初はほっとした表情を見せ、公民館などで集団生活が始まるとプライバシー問題を、それが解決されると今度はする事がない苦痛を訴えるという。やがて男性は地元被災地に帰り、女性や子供たちが残るようだ。安全と生き甲斐は別のようである。
「私は年金生活の年寄りで、見舞いの一銭もあげられない」と嘆く86歳の女性患者が次のような歌を披露してくれた。「くりかえす なえ(地震)のかたちか 家裏の 電車3両 今日も動かず」…ブラボー! お気持ちは診察料から税の形で被災者へ回って行きますよ、パリのマエストロの義援金と一緒に、同じルートで、きっと。
千田桂大氏