都内に住む長女が膝の痛みで帰省した。私がたまに仕事に行く総合病院を受診したら、何やら珍しい病気の疑い、入院治療が必要ということでしばし自宅待機となった。
折しもテレビでは大相撲夏場所。夕食時に録画で娘と観戦した。ところが娘は横綱白鵬も人気の遠藤も逸ノ城も、郷土力士豪風(たけかぜ)も知らない。あまつさえ「相撲って、毎日同じ力士が戦っているの?」などという。体型と顔が似ていて違いが分からないらしい。現在、幕内力士42名中、日本人は25名、モンゴル人10名。土俵に上った力士のどっちが日本かと当てさせたら全部はずれた。
日本人と見分けがつかないモンゴル人力士の活躍は、角界にとって幸いである。国技である印象を損なわない。他の国の力士も土俵を長く勤めていると次第にチョンマゲが似合ってくる。ブラジルの魁聖やジョージアの栃ノ心は歌舞伎役者にしたいくらいだ。インタビューに答える彼らの流暢な日本語にも驚く。他のスポーツの外国人選手とは違う。
連日見るうちに娘もいくつかの特徴に気づいた。娘が好むサッカーに比べたら勝負は一瞬。早期にビデオを導入しただけあって勝敗が明快。勝っても取り口や態度が良くないと客席から拍手をもらえない。小兵力士が大柄力士を破る醍醐味。呼出しの声。懸賞金。立行司の華麗な衣装と立ち居振舞い。砂かぶりにお澄ましの着物姿…。
エジプト人でイスラム教徒の大砂嵐はラマダン断食と重なる本場所が心配だった。だが日没を待っていた兄弟子とちゃんこ鍋を囲む姿がテレビに映りほっとした。親方の注意には「はい。すみません」、ガッツポーズはご法度など、しきたり、所作、礼を叩き込まれる。日本語も上達するわけだ。
国技館で撮影した大砂嵐の写真をメールで送ってくれた患者や友人がいる。秋田の老舗和菓子本舗「榮太郎」の社長は名横綱大鵬の義弟で、大砂嵐の大嶽部屋(元大鵬部屋)に顔がきく。先日は用件そっちのけで四股を踏んでみせた。娘も病気が治ったら膝の強化にいいかもしれない。こんな巡り合わせでひいき筋がまた増える。
大砂嵐
森山から湖東平野を望む(左手は出羽丘陵、右手は大潟村と日本海)
撮影した右膝工事中の長女
見守る?筆者