政府の肝いりでこの7月と8月、朝方勤務で定時帰宅を促す「ゆう活」が実施された。秋田県職員の実施率は14%だったが、ある若い県職員は、「僕は3日でやめました。退庁が毎日8時だったので5時に帰ってもやることがないし、夜型生活が身に染みついて早起きがつらい」と言うのであった。
飲み仲間の某市教育長は、「ゆう活の大号令を発したが、相談や報告の電話が市内10校から殺到するのは午後6時過ぎで、何ともならなかった」という。生徒の親たちの帰りが残業などで遅く、対応する教師に早く帰れと言っても困難らしい。
かように、日本では企業だけでなく公務員にも長時間労働の「ブラック企業」体質が蔓延している。近所のコンビニ経営者は、「うちはブラックどころか漆黒です。深夜帯のバイトは敬遠されるから私と妻がやるしかない。忙しすぎて毎日夫婦げんか」とぼやく。
若いころ3か月ほど滞在したパリでは、夕方4時過ぎ、家路を急ぐでもなさそうな紳士がひょいとパテスリーに立ち寄ってケーキをほお張り、ハンケチで口をぬぐってまた歩きだす光景を何度も目にした。帰宅すれば家族と公園の散歩やスポーツを楽しみ、それから夕食といった生活で、日本のように帰って風呂、晩酌とは大違い。仕事の繁忙期は早朝出勤し、退社時刻は変えないと聞いた。
「夕刻のゆとり」が、欧米では大人が指導するスポーツ少年団の誕生につながった。だがわが国では残業後の指導者にあわせ夜8~9時まで少年たちは練習し、欧米からやってきたALTたちは「クレージー!」と目を丸くする。
ある銀行支店長は、異動先の行員らが連夜8時まで残業しているのに驚き、観察した。そして1週間後、「疲れた後の残業は能率が悪い。光熱費も無駄だ。来週から定時退社厳守」と命じた。そしたら日中ぼんやりの「5時から男」たちが豹変したという。国の指導を受け近所の大手企業も週2日のゆう活を始めた。国民の3人に1人が交代勤務の日本。残業や夜の仕事を減らせば労働力不足や健康問題が改善し、「クレージー!」返上ができそうに思う。
追記 角館のお祭りが9月7~9日に行われ、今年も連日連夜、駆け付けた。2日目の深夜、私たちとは別の2つの丁内が曳山運行の交渉でもつれ、いくつもの不幸な原因が重なって死亡事故が発生した。3日目は曳山の運行範囲が自粛され、異様な雰囲気のうちにお祭りは幕を閉じた。関係者たちは来年以降の祭りの在り方に頭を悩ませている。
角館のお祭り3日間 初日の安全祈願
賑やかに運行開始
他丁内と通行優先権を巡って交渉