2か月ほど前、私の所属するテニス俱楽部の社長が一方通行の道路を逆走し、電柱に正面衝突して救急搬送された。一瞬、気を失ったという。幸いケガはなかったが、問題は失神の原因である。テニス仲間でもある搬送先の脳外科医は脳腫瘍を疑い、大学病院に紹介した。大学ではあれこれ検査し、種々の根拠から脳の手術を社長に勧めた。
ちょっと待った、と口を挟んだのは、やはりテニス仲間の放射線科専門医である。彼はこの大学に勤務歴はない。強心臓の彼は大学の医師団へ執拗に説明を求め、その結果、「手術はすべきでない」と社長に進言した。
早稲田大時代は名門テニス部の主将を務め、幼いころからバイオリストでもある社長の方は、「テニスとバイオリンができなくなるような治療なら断る。生きている意味がない」と私と別のテニス仲間の医師に語った。川島なお美さんも「女優でありたい」と明言し自分の意志で治療法を選択した。もっともな話である。事態は膠着状態になりかけた。
そこで社長は、「がんと闘うな」で有名なK医師のセカンドオピニオンを仰ぐべく上京した。秋田に戻った社長によると、「手術を避けたのは正解。抗がん剤は効かない。放射線治療も高線量では逆効果」などのアドバイスを受けたという。テニス、バイオリン、70才という年齢などを考えて、社長も腹をくくったようである。
3年前、私の医院に男性が相談に訪れた。近くの病院で母親が胃がんの手術を勧められたが、こんな田舎の病院で大丈夫だろうかというのである。彼が住む東京の某癌研にセカンドオピニオン受診を勧めた。病院から資料を受け取って東京に戻った彼は、数日後再び現れ、「納得できた。母親には秋田で治療を受けてもらう」とすっきりした表情だった。
社長は、「K先生の診察は30分で3万円。一日10人、月20日なら月600万円。金は何に使うのかなあ」と人様の懐に興味を示す余裕だが、自分の気持ちの整理のための3万円だった。患者自身の人生観、あるいは家族の価値観を見つめ直すお手伝いが、セカンドオピニオンの存在理由かもしれない。
12月30日、田沢湖スキー場オープン!
熱狂的ボードファン激増 スキーは少数派に
この爽快感 スキー場に来ない人の気がしれない
スキー場から田沢湖を望む