秋田県の小中学生は全国学力テストで毎年トップクラスである。なぜだろうと色々な人々が来県し、授業を視察している映像が時々テレビに流れる。だが、トップの座を守るため教師らの苦労は大変らしく、当院を受診する先生も少なくない。
私がPTA会長をしていたころ、ケータイによる中学生の夜更かしが問題になり始めていて、秋田県PTA連合会の標語は「早寝早起き朝ごはん」だった。それでも学力テストが1位だったため、調子に乗った秋田県教育委員会は翌年、「早寝早起き朝ごはんと家庭学習」とPTAの頭越しに標語を変えた。これに中学生らが反発した。朝ごはんを食べるような生徒は勉強もするから、「家庭学習」は蛇足だというわけである。
それが、今回ノーベル医学賞を受賞した大隅教授の「オートファジー」により、朝ごはんも大して意味がないようなことになってしまった。数日間なら生物は食わなくても自分の体から栄養やエネルギーを合成し、ちゃんと活動できるようになっている、という、考えてみればごく当たり前のことを証明してくれたからである。ライオンだってクマだって何日も餌にありつけなくとも簡単に滅びたり能力が落ちたりはしない。人間も朝飯を抜くくらい最初からどうってことはなかったのだ。
全寮制だった学生時代、朝ごはんを食ったか食わなかったかは大学側に把握されていた。ある教授は、「朝飯を食っていない学生は、成績が悪い」と調査結果を公表し、学会にも報告した。だが私はともかく、朝飯抜きで立派に進級・卒業し、医業や研究に励む卒業生が圧倒的に多いのだから、今回のノーベル賞は教育界に波紋を巻き起こしている。表面化はしないが、たぶんそうだ。
ある睡眠学者は、「若者は朝が弱い。生理学的にやむを得ない年齢的な事象である。学校や会社は朝ゆっくり始業すべき」とぶち上げ、一部からひんしゅくを買った。真正面から常識に挑むのは結構だが、いくらなんでもこれはやり過ぎで、さすがに賛同はほとんど得られなかったようである。
大宮の うちにありても あつき日を いかなる山か 君はこゆらむ(明治天皇を待つ皇后がこの歌をしたためた)
徯后阪(きみまち阪)をなつかない愛犬と歩く(能代市二ツ井)
久保田城址(秋田市)
久保田城の夕暮れ