この1カ月で親しい人が3名亡くなった。今まであまり気にしていなかったが、叔父の時、「秋田は他の県と弔いの仕方が違う」と葬儀社の職員が話していたので驚いた。
叔父は、秋田市内の病院で亡くなると自宅からやや遠い葬儀場へ直行したため近所の人々はご遺体に会えなかった。翌日の納棺も家族と近くに住む私たち夫婦だけで、2日後の火葬場に遠方から親族がやってきてご遺体とお別れし、お骨を拾いと通夜、次の日が祭壇の骨箱の前で葬儀と直会だった。
一方、学生時代から大変お世話になった栃木の女性の場合、ご遺体は病院から自宅へ戻り、親族と近所の「組」の人々が段取りを決め、翌日自宅で納棺、次の日がお通夜と直会、3日目に私は葬儀場へ駆けつけた。旦那さんは私の顔を見るなり号泣した。ご遺体は祭壇に安置され、本葬儀と初七日の法要が営まれ、多数の献花からもぎとった花を参列者全員がお棺に添え、火葬場へ向かうご遺体を見送った。火葬に立ち会うのは親族と「組」の人々だけで、私は行けないと知って面食らった。
秋田のある著名人の場合は、密葬との遺言によりご遺体の安置場所は不明、翌日、風の便りで約20名が火葬場に駆け付けお骨拾いをした。そして親族ではない見知らぬ女性が骨箱と共に車に乗ったが、複雑な事情を反映し、火葬に立ち会った女性らは誰一人お辞儀をせず、我々男だけが頭を下げて見送った。祭儀場がどこか誰も知らない。いずれにせよ、ほとんどの人がご遺体とお別れできず、献花も参列もできなかった。
秋田では死亡後24時間を過ぎるとすぐ荼毘に付す。2日も経つと県外からの弔問客は骨箱に手を合わせるしかない。また、葬儀後は献花の始末に困り、抜き取って参列者に持ち帰ってもらう。ご遺体が花に包まれるということはない。
話は変わるが、生前あまり夫婦仲の良くなかったある女性は亡くなる前、「夫と同じ墓には入りたくない」と遺言した。そこまでいうかと旦那がぼやくうちに49日の忌明け法要が営まれ、遺族は新しく求めた墓地にお骨を葬った。『霊園の別の区画を妻が買い』という川柳がある。栃木では花に包まれた老妻に泣いて別れを惜しむ旦那さんの姿に涙を誘われたが、葬送の形だけでなく、夫婦の形も様々のようだ。
彼岸花(曼珠沙華)と蝶の亡骸
なつかない愛犬ジヨンと
玉川ダムの紅葉
*写真:佐々木かなえ(千葉克介写真教室)