アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「栃木のステキ」No.15

「AISOME実行委員会」代表 今井彩衣さん

益子町のトリエンナーレ「土祭2015」の関連企画として藍染のファッションショー「AISOME」が開催される。パンフレットにその目的が記されている。「デザインの力で新たな藍染の在り方を提案し、藍染の文化を継承させる。ファッションショーを通して藍染の伝統・文化に触れるきっかけをつくる。日下田藍染工房を、栃木の大きな魅力の一つとして発信することで、栃木をより盛り上げる」

若い情熱ある企画者とデザイナーたちの集団が力を結集して「藍染」と「デザイン」と「栃木」を掲げて地域文化をショーで表現。その拠点となっている宇都宮市の「KAMAGAWA POCKET」 を訪ね、「AISOME実行委員会」代表の今井彩衣さんに話を伺った。

藍染に魅せられて

今井さんは高校(栃木県立白楊高校)時代に県指定無形文化財工芸技術保持者である草木染の作家、日下田正さんの織物の授業を受けていた。

「それが日下田先生との出会いです。高校時代にはFashion Circle ECHOESを立ち上げて、ファッションショーを企画していました」

高校時代に同じクラスだった友人が、服飾関係の大学に進学し、日下田さんが高校の授業で、資料として配布した古布や綿などを、その大学の教授に見せたところ「何故、あなたがこんなに貴重なものを持っているの?」と言われたという。

今井さんはその資料の価値に驚き「まだ見たことのない藍染の工房を訪ねてみよう」と、友人と恩師のいる日下田藍染工房を益子町に訪ねた。

「初めて見学させていただきました。すごい所なんだと、その時初めて分かったのです」

今井さんは日下田さんに織物だけではなくて「藍染も勉強したかった」と話すと、日下田さんは当時まだ19歳だった今井さんに「やさしい草木染教室があるから、20歳になったら応募したらどうですか」と話した。その後、今井さんは藍染を体験してその面白さに魅せられていった。

「高校時代は(織物や藍染の世界は)何となく面白そうだなと思うくらいだったのですが、卒業してからどんどん興味が湧いてきましたね」

プロジェクトの進行とともに藍染の素晴らしさを知る

今井さんの活動拠点は宇都宮市の釜川沿いにある「KAMAGAWA POKET(釜川ポケット)」。宇都宮大学の工学部建築学科の大学院生が設計デザインした建物がある。

「宇大の院生が後輩の学生と夏休み中に、ここをリノベーションしたのです。もともとは古くぼろぼろの建物でした」

今井さんは釜川沿いの服屋さんによく遊びにきていて仲間が自然とできていた。「釜川沿いでファッションショーやろうよとなって『ファッションストリートプロジェクション』というイベントをやりました」。なんと、そのショーの反響が大きく大成功を収めたという。

「それがきっかけで、じゃあ次は何をしようかなと思ったとき、いろいろな年齢の人、いろいろな特技を持った人などが集まれば、もっと大きなことができるんじゃないかな?と思いました。そのときに日下田藍染工房のことを思い出し、先生にファッションショーができないか聞こうと思って益子に行きました」

日下田さんにファッションショーをやりたいと願い出た時も藍染のことはそんなに深くはわからなかったという。「ファッションショーのプロジェクトが進んでいくうちに先生の工房の布の特徴とか、藍染の良さとか、その歴史とかを知って、どんどん藍染の素晴らしさを知りました」

面白いことを打ち出せば街中が面白くなる

「今までは外部の人と関わりながらのイベントというのはあまりなかったのですが、今回は『土祭』の事務局の方やデザイナーさんなど、プロの方たちが多く関わっているので、いい経験になっています。関わってくださるプロの方たちも、私がこれからもっと面白いことができるように応援しつつ活動に加わってくれています」

プロジェクトのメンバーは高校時代に知り合った友人や、宇都宮市でデザイナーとして活躍している人、藍染の服作りをしている人、これから自分のブランドを立ち上げようとしている人、そしてカメラマンや音楽家など、多彩である。

「主要メンバーは20歳後半ですが、関わった方々もこのプロジェクトによって名前を知ってもらえるきっかけになるのではないかと思っています。このようなクリエイターの方たちが、『栃木ですごく面白いことをしているんだよ』ということを発信できたらいいなと思っています」。プロジェクトにかかわる世代も高校生から50歳代までと幅広い。

「さらに栃木県の他の藍染工房も巻き込んでできたらいいのかなと思いますし、面白い人たちが関わってくれているので、メンバー同士でも出会いがあると思います。その出会いの中から、ファッションショーではなくても、栃木で面白いことがどんどん起こって行けばいいと思っています。誰かがイベントなどで面白いことを打ち出していけば街中が面白くなっていくと思います」

(2015年9月9日取材)

「KAMAGAWA POCKET」

取材中の今井さん

「AISOME」ポスター

「AISOME」パンフレット

藍染のスカートと帽子、ブローチを胸に

「AISOME」

Mail:info@aisome.jp

HP:http://aisome.jp/

Facebook:「AISOME」

twitter:aisome_info

Address:栃木県宇都宮市二荒町8-15 KAMAGAWA POCKET

土祭

http://hijisai.jp

KAMAGAWA POCKET

http://kamagawapocket.com/

「日下田藍染工房」(ひげたあいぞめこうぼう)

住  所
:芳賀郡益子町城内坂1
電  話
:0285-72-3162
営業時間
:8:30~17:00
定 休 日
:月曜日
駐 車 場
:2台(ほか、近くに町営の駐車場があります)