アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「栃木のステキ」No.20

有機農業「帰農志塾」塾長 戸松正行

「都市生活から抜け出して自然と共に生き、仲間として共に地域住民としてかかわり、地域の一員として生きていこうと思う方、農や自然と共に生きたい、農業を通して人とかかわりながら生活したいと志す人を探しています。共に有機農業を広めていきたいと思っています」と、帰農志塾の塾長戸松正行さん。

1976年、帰農志塾は農家の後継者不足問題が深刻化するなか、農業の新しい担い手としての新規就農者を育てるために設立された。設立者は戸松塾長の義父、現在塾の代表で戸松正さんである。「約40年前ですから理解者が少ない時代で義父母は大変苦労しました。僕は約10年前にここで指導を受けて代表の長女と結婚し志を継ぐことになりました」

ハウスで作業中の戸松正行塾長

有機農業で新規就農

「農業はやった分だけ結果が出ます。ダメな結果は理由がありますから科学的論理的です。植物を相手にするのですから当然それに合わせるスキルが必要です。私たちが農家として自立するだけでなく、多くの方に農業の魅力を知ってもらい、日本を支える農家になってほしい。そして、有機農業を当たり前にしたいです」

就農希望者を常時7~8名受け入れ、那須烏山市の自然豊かな山に囲まれた7haの農地に、年間80余種類の野菜・米・鶏(平飼い900羽)を飼い、有機農業を実践。 農産加工・庭先果樹など、あらゆる研修が可能な農場である。

技術的には土作りに力を入れ、堆肥、緑肥、ボカシ肥を利用。平飼い養鶏も行い農場内循環をさせる。土壌の物理性や排水改善も行っている。その他、天敵の住処や生物多様性の世界を作り出すことにより安定した生産物が得られている。

また旬の野菜を少肥で栽培し、安全で栄養価の高い野菜の生産に努めている。約150世帯の会員と直接提携を行う一方、自然食品店やデパートにも出荷し、会員の方々と農場見学やイベント、料理講習会などを実施している。子どもたちに有機で育った食べ物を食べてもらうため、現在2つの保育園と1つの小学校で給食等に利用されている。

「お互いに顔の見える関係で信頼関係を大切にし、生産者と消費者の提携という考えで結びついています。1995年に農場を那須烏山市に移転した際、宇都宮の若い会員の方が塾の野菜を食べるようになり、その2~3年後、子どもの医療費が減ったという嬉しい声が多くの会員から聞かれました」

腐葉土の前で説明する戸松塾長

平飼いの鶏

ボカシ作り

エコ農業の看板

「共育」

帰農志塾の「教育」は相互研鑽を目的としているために「共に育む」という考えで「共育」の言葉を使用している。研修生に各圃場を担当させ、週例会による技術検討会を実施するとともに、毎月レポートを提出することにより技術チェックを行っている。

農作業はもとより配送・経理・機関紙の編集など、生産から流通、会員との交流を含め、すべての塾運営に関わりながら、有機農業の技術・経営・自然の生態などを学習していく。研修生全員で運営している塾でもある。

入塾期間は2年を原則としているが、ある程度農業経験のある人や、国際協力を行う上で部分的な技術を学びたい人はその限りではないという。

広い畑で草を取り除く戸松塾長

手前はらっきょう

仲間と共に地域で生きていく

現在まで100人近い研修生達が全国各地の農村や海外に巣立っていった。また、アジアや要開発国における有機農業の普及の重要性から卒塾生を技術協力として派遣することもある。

「ほとんどの卒塾生が新規就農や技術協力活動を行っていますが、今後はその他にも地元で就農する人を増やしたい」と、地元の農業や文化自然を大切にし、共に生きていく仲間を探しているという。

「有機農業のノウハウは約40年新規就農者を育ててきた塾で学んでください。そして近隣で就農し、助け合い協力し合いましょう。それこそがもう一つの生き方、暮らし方としての人の歩みではないでしょうか。自然や仲間と共存、共生していくことが大切ではないでしょうか。今後の人生を農や自然とかかわりながら自分なりの生き方をしたいと考えている人を応援します。また、農業で独立するということは社長になるということです。その覚悟がある方にその学ぶ場をこれからも提供していきたい」

戸松さんは農場を案内しながら、日焼けした優しい笑顔で語ってくれた。

春菊(11月)はサラダでもおいしい

緑色の濃いブロッコリー(11月)

畑をバックに戸松塾長

入塾するには、電話または手紙にて訪問日を決め、なるべく1泊以上で1~2回訪問し、お互いの意思・事情を理解した上で決定する。

短期研修者には寝食のみを提供し、研修費は不要としている。長期研修者には寝食等を支給し、研修期間中の最低限の生活は保障している。

卒塾時、帰農する者に対しては本人の帰農条件や貢献度によって異なるが、20~30万円から100万円程度の奨励金を与える。希望者は青年就農給付金(準備型)を受け取ることができる。

帰農志塾(きのうしじゅく)

〒321-0604 栃木県那須烏山市中山1041

代表 戸松 正/塾長 戸松 正行

TEL&FAX:0287-83-0930

E-mail:kinousijyuku@yahoo.co.jp

URL:http://www.kinousijyuku.com/

※訪問希望者は必ず事前に連絡し、承諾を得てから訪問してください。