自信を持って残して置ける物を造る
今年(平成25年)で私は52才です。今の仕事(家業の江戸神輿造り)に従事するようになり27年になりました。この仕事をすることは、自分なりに小学校の低学年のころから決めていた事です。大学生の長い休みには自分の家で手伝い(アルバイト)をしていたので、東京で「他人の飯を食う」という経験の後、家に戻っていざ家業を始めたときは、けっこうすんなりと仕事に入って行けたような気がしていました。しかし、親方(実父)からすると目にあまるものがあったように思います。それから27年が経ちました。今はどうでしょうか?
神輿を造ることも大事なことですが、その神輿を納めた地域に行ったり、町会に行ったりして、神輿が地元の人達に認められて喜ばれているか、どう思われているか、地元の人の声も色々と参考になります。自分で実際に担いだりして勉強をしています。
地元の人達に喜んでもらい、みんなで担ぎ上げられている神輿の姿を目の当たりにするときは、神輿を造っていてなんとも言いようのない最高の気分に浸れる時間です。こうした時間をこれからも、もっと増やして行けるように日々精進し、努力を惜しまず続けて行かなければと思います。
また、これからは、古い神輿の解体復元をして神輿自体の歴史なども勉強や研究などもやって行こうと考えております。
神輿以外にも、木を材料とした色々な物を造ってみたいとも思っています。この頃は、いつも造っている物を造るのも慣れていて良いのですが、今までに造った事のないものを造るということは、今までのノウハウを駆使して色々と考えながら形にしていくので楽しいと思っています。難しければ難しい程やり甲斐が有り、挑戦したくなって面白いと思います。
結局、物を造っていくということは、後々後世に残していくものですから、後で誰が手掛けたと言われたりした時に、笑われる事の無いよう、自信を持って残して置けるものを造って行きたいと心がけていきます。
(文:小川 亨/下野手仕事会40周年記念誌『下野手仕事会四十年之軌跡』P40-41より)