大地と共に
大地――。いつでも、ここにある大地。
思えばなんと不思議な存在だろう。
大地は、幾千億の時の中で、植物を育て、生き物すべてを育んでいる。常に目の前にありながら可憐に咲く一輪の花や、名もない草木に気をとられることはあっても、大地そのものに視線を止めることはなかった。さりげなく、人々の視線を超えて在るもの、それが大地。
土を練りながらいつもこの土の生い立ちを考える。
土は、土のまま、在り続けることができる……。
轆轤の上で湯呑みになったり、花入れや壷になったりもする。もともと土の塊だったものが、形を少し変え、ものへとなっていく。
そして、窯の中で陶器へとさらに変わる。
しかし、土は土なんだと思う。
さりげなく、そこに在って、主張しない。
そんな陶器がいい。
大地のような、土そのものをとどめたものを目指しています。
祖父の時代から家業を継ぎ生活に潤いが与えられるような器の製作創りを心がけてきました。
これからも祖父や父の教えを守りつつ新しい方向性を示して頂いた、恩師藤原郁三氏に感謝し、生涯現役で轆轤を引き続けたいと思います。
(文:川原井 與一郎/下野手仕事会40周年記念誌『下野手仕事会四十年之軌跡』P42-43より)