小砂焼きの伝統を守りながら新しい焼物作りへ
小砂焼は、天保元年(1830年)水戸藩主徳川斉昭の殖産興業政策により小砂に陶土が発見され、水戸に設けられた水戸藩営製陶所の原料陶土として使われたのが始まりといわれています。明治20年(1887年)6軒の陶業所ができるまでになり、陶器学校を開設されるほどになっていました。
小砂焼が広く認知されるようになった特徴の一つには、金色模様の上薬にあります。金結晶と呼ぶその光沢のある色合いは、他にあまり類を見ないし、焼しまりのある丈夫な地元産の陶土との相性がとても良いのです。現在も陶土は多く産出し、これが小砂焼の強みだと考えています。
私は6代目として、昭和55年に家業を継ぎ数人の職人とともに制作活動を続けてまいりましたが、残念ながら平成に入ると購買力の低迷が目立つようになってきました。何とか小砂焼を盛り上げるため、新たな顧客の発掘や小砂焼の認知度アップに繋がればと思い、地域の有志らと伴に、平成8年小砂焼体験施設を開設しました。お陰様で、今までにない客層が増えたことは良い結果だと思います。小砂焼をもっと身近に感じ愛用してもらえることを目的に、陶器市も春と秋に開催しています。
製品は伝統的なスタイルを残しつつ、多種多様な色や形の追求にも心掛けているところです。壷や皿などを加えた日用品の器が主な製品でしたが、器だけにとらわれることがなく干支などの置物やストラップなどの分野にも製作の幅を広げています。
一つひとつ丁寧な仕事をすることに努め、小砂焼の伝統を守りながら、楽しい焼き物づくりを続けられるように努力していきます。
(文:藤田 眞一/下野手仕事会40周年記念誌『下野手仕事会四十年之軌跡』P70-71より)