心の安らぎを求めながら
石佛は印度で生まれて、中国、朝鮮を渡り、佛教と共に日本にやって来ました。初めは、一部特別階級の人々による造立でしたが、江戸時代中頃より、一般人も盛んに、立派な石像を建てるようになりました。
伝統的な技を伝えるには、名人、上手と言われる親方、先輩方々の良い所を頂戴して自分のものにすることが大切です。
特に佛像は、数々の約束事が教義により多くありますので、自分で勝手に変えることは、できないからです。私達の年代の頃は、仕事を教えてもらうのではなく、親方や兄弟子の仕事を目で盗み取るという、教育修行法でありました。
また、他所の親方の仕事も同様に、自分が不得意な仕事は、どのようにこなしているのかと、勉強を致しました。
そして、「心の安らぎを求め、美しい作品を視、きれいな音楽を耳にし、汚い事柄には近づかない事、見憎い事は特に印象が強く、すぐに、仕事上に表れる」と言われております。
とかく石佛は、お寺や墓地などに多く見受けられ、お線香の匂いが頭に浮かびます。もっと、身近に或る様にするためには、平田郷陽先生、岡本正太郎先生の作品に倣い、勉強をさせて戴き、仕事の上に生かしていきたいと思います。
(文:大久保 安久/下野手仕事会40周年記念誌『下野手仕事会四十年之軌跡』P28-29より)