アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「伝統と文化―下野手仕事会―」No.6

大久保 安久 -石佛-

心の安らぎを求めながら

石佛は印度で生まれて、中国、朝鮮を渡り、佛教と共に日本にやって来ました。初めは、一部特別階級の人々による造立でしたが、江戸時代中頃より、一般人も盛んに、立派な石像を建てるようになりました。

伝統的な技を伝えるには、名人、上手と言われる親方、先輩方々の良い所を頂戴して自分のものにすることが大切です。

特に佛像は、数々の約束事が教義により多くありますので、自分で勝手に変えることは、できないからです。私達の年代の頃は、仕事を教えてもらうのではなく、親方や兄弟子の仕事を目で盗み取るという、教育修行法でありました。

また、他所の親方の仕事も同様に、自分が不得意な仕事は、どのようにこなしているのかと、勉強を致しました。

そして、「心の安らぎを求め、美しい作品を視、きれいな音楽を耳にし、汚い事柄には近づかない事、見憎い事は特に印象が強く、すぐに、仕事上に表れる」と言われております。

とかく石佛は、お寺や墓地などに多く見受けられ、お線香の匂いが頭に浮かびます。もっと、身近に或る様にするためには、平田郷陽先生、岡本正太郎先生の作品に倣い、勉強をさせて戴き、仕事の上に生かしていきたいと思います。

(文:大久保 安久/下野手仕事会40周年記念誌『下野手仕事会四十年之軌跡』P28-29より)

下野手仕事会四十年之軌跡

下野手仕事会40周年記念誌『下野手仕事会四十年之軌跡』

発 行 日
2013年9月1日 第1刷発行
編   集
下野手仕事会四十周年記念誌編集委員会
発 行 人
下野手仕事会
編集・制作
有限会社 アートセンターサカモト
〒320-0012 栃木県宇都宮市山本1-7-17
TEL:028-621-7006 FAX:028-621-7083

[定価]本体2,000円+税

©Shimotsuketeshigotokai.2013.Pronted in Japan

ISBN978-4-901165-06-8

◇問い合わせ先

下野手仕事会 会長 藤田眞一 TEL:0287-93-0703

(有)アートセンターサカモト TEL:028-621-7006

大久保 安久

号、昌英。昭和15年、東京深川生まれ。戦災を避けて父母の郷里栃木県に移る。父兵武について石工の道に入る。同40年ころまで建築土台の石据えなどが多かったが、以後、石佛を多く手がける。平成17年、栃木県伝統工芸士に認定される。

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