アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「BIOS電子版」No.36

文星芸術大学 非常勤講師 西洋磁器絵付け-川島 亮子-宇都宮市は『百人一首』発祥の地

「宇都宮市は『百人一首』発祥の地と言われています。せっかくの発祥地にちなんで百人一首を書いた何かをと思いまして、今までは絵付けばかりでしたが、和の雰囲気のお皿に歌を書きました」ホテル東日本宇都宮ギャラリーで開催した川島さんら主催の「秋桜展8/2016.9.19~9.30」に伺い、お話しを聞くことができた。

川島さんから渡されたカードに「百人一首は、藤原定家が息子家為の妻の父、宇都宮頼網(法名・連生)の懇望によって染筆した小倉色紙がはじまりです―――」と説明が書かれていた。

百人一首を書いたお皿の説明をする川島さん(展示会にて)

家族の食卓に百人一首のお皿を

川島さんは宇都宮市に生まれ育ち、大学も宇都宮大学教育学部(国語科)を卒業、教師として地元の子どもたちの教育に従事してきた。現在、文星芸術大学(上野憲示学長/宇都宮市)にて西洋磁器絵付けの講師として従事する傍ら、「アトリエBritish Rose」を主宰、展示会などを通して他分野のアーティストたちと地域の文化向上のために貢献している。地元宇都宮が発祥とされている「百人一首」に対する愛着があり、小さい頃から書道もやっていたことから、絵(文字)付けを通して広めたいと願っている。

「この夏に東京の『丸善』で展示会を行ったときに、この百人一首のお皿を展示しましたら、とても反響がありました。展示会後も、『私の好きな百人一首を書いてください』と、注文をいただくなど人気がありました。東京で人気があるなら、百人一首の発祥地の宇都宮で展示したら皆さんに喜んでもらえるかなと今回は展示してみました。自分の好きな歌を探しながら『この歌、知ってる』『この歌が好き』などと言って購入される方がいますが、このお皿で家族みんなで楽しみながら食事ができるのではないかなと思っています」

家族で楽しむ食卓で子どもたちも百人一首に自然に愛着がわくのではないかということである。それだけに子どもたちをはじめみんなが親しめるように、百人一首の文字は万葉文字ではなくて、誰でも読めるようなアート文字を用いて書いた。また、川島さんは平安時代から伝わる日本の遊びで有名な「貝合わせ」をモチーフにした対のお皿も考案して百人一首を書いている。

「上の句と下の句をそれぞれ書いた皿を二枚一組にしていますが、今回の展示会が初めての試みです。百人一首を入れた変わった作品にしたいと思って制作しました」

百人一首を書いたお皿

貝合わせと書の作品

マイセンの磁器に魅せられ、やがて水墨画風な絵付けへ

「私は絵が好きでこの絵付けの道に入ったのではなくて、マイセンやウェッジウッドなどの器が好きだったのです。このような絵を自分で描いてティータイムができたらどんなにかいいかなと思いました。ドイツの本場マイセンから来日する講師を迎えて講習会を開くマイセンの絵付け教室に通いながら、磁器の絵付けを習得していきました。金や銀は絵付け専用のものがあり、絵の具も専用のものがあります」と話しながら、展示されている作品を説明してくれた。

「有名なコペンハーゲンのフローラダニカと同じような物を日本の工房に注文して作っていただいて、同じような描き方で絵付けをしています。フローラダニカは世界一高級な食器と言われています。ロシアの女帝エカテリーナのためだけにデンマークが送り続けた食器です。また、ヘレンドも好きなのでその技法も学んできました」と、長い間、西洋磁器の絵付けの世界で活躍していた川島さんは、磁器にまつわる歴史と魅力を楽しそうに語る。

「手描きの器は飽きがきませんので、みなさん大事に使っていただけます」

しかし、食器好きから始まって習得していった絵付けも、長い間には「西洋磁器」の絵付けに対する思いの変化があったと話す。

「マイセンとかウェッジウッドなどだけではなく、日本の水墨画の描き方でさらっと描いた作品にも惹かれてきました。きちんとしたマイセンの描き方よりも自由な描き方で、だんだんといろいろなものを描いてみたくなりますね。和の器は、この描き方のほうが良いと思いました」

西洋磁器に魅せられてはじめた絵付けが、それらをベースに日本の「和」に繋がっていった。そして水墨画風の絵付けへと移行する過程を経て、現在の「百人一首」の絵付け創作となった。繊細で華やかな西洋磁器の絵付けの作品の傍らに、落ち着いたシンプルな和のお皿が展示されていて、現代の日本の家も、家族の食卓も、お米(和)とパン(洋)をバランスよく取り入れている時代であることを思わされる。

文星芸大の学生に技術を継承させる

川島さんは文星芸術大学で講師として着任してから約5年になるという。今は、これからの日本の芸術文化を担っていく若いアーティストに、長い絵付けの歴史の中でその技術を継承させている。

「今、学生たちはオールドノリタケのレディスプレートの原画になった作品をベースに絵付けをしています。原画の資料は上野憲示学長が持ってきてくださいました。オールドノリタケは色、形などを同じようにデザインしながら、ノリタケ独自の世界を創り出していったのです。その他、オールドノリタケの世界観から影響を受けたというヨーロピアンの絵付けの作品を学生たちは文化祭(文星芸術大学北斗祭)で展示し好評でした」

学生たちには常に本物に触れさせて学ばせ指導していった。若きアーティストを育てるためにも、百人一首発祥の地という文化のなかで自身も新たな作品の制作を模索しつつさらに研鑽を積む川島さん、学生たちと同じように輝く瞳が印象的であった。

文星芸術大学での授業風景(工芸論Ⅱ)

文星芸術大学 上野憲示学長と

文星芸術大学 上野孝子副理事長と川島さん(上野さんの展示会で)

オールドノリタケレディスプレートのもとになった原画

文星芸術大学の授業(工芸論Ⅱ)で学生たちと

学生たちの作品

学生たちの作品

アトリエ British Roseで

教室で指導する川島さん

兜飾りや雛人形も人気がある

クリスマスの作品

作品

作品

川島さんと作品

(取材2016年8月20日)

アトリエ British Rose

〒320-0022 宇都宮市千波1-7

TEL:028-622-0212

営業時間:10:00~12:00、13:30~15:30

定休日:日曜・祭日

※絵付け教室の時間はご相談の上変更も可能です。