11月30日午前6時過ぎ、秋田市土崎のスーパー「いとく土崎みなと店」に熊が侵入し、鉢合わせした従業員が受傷した。店の隣は堂々たる4階建て警察署である。この店へ時々出かける家人は「お隣さんがポリスだからすぐ解決ね」といい私もそう思った。そこへ茨城の友人からメール。「キリタンポが届きました。発送元は今テレビに出ている店ですか?」
テレビに映る猟友会会員らは発砲できない猟銃を肩にかけたハンター姿、秋田市職員は作業着、お隣さんは顔面保護ヘルメットに頑丈そうな防護服で盾を構えている。捕獲作戦の主役は市らしいが、熊が飛び出してきたら皆さんどうする気か。夕方になっても動きはなく、店にこもる熊と、戦う気のない面々は最初から膠着状態である。市は翌日ドローンを飛ばして店内を探った。熊はバックヤードにいる―。箱わなを仕掛けた。
半月前から土崎に熊出没の噂はあった。ところが「実際に姿を見た人はない」「こんな海辺の繁華街に出る訳ない」と馴染みの寿司屋は夜な夜な賑わい、お隣さんも警戒態勢薄く、この事態に至って慌て周辺道路に黄色のバリケードテープをめぐらした。2日目午後になっても進捗なし。食糧満杯のスーパーで熊さんは籠城を楽しんでいるのかなと外野席は呑気である。
55時間後の12月2日朝、箱ワナに熊が入った。体長1m、70kgの雌。「いくら獰猛でも、その体格なら機動隊の猛者4、5名でエイ、ヤーとやれそうなものだが」と近所の剣道3段はいうが、知人の警官は「野次馬を近づけないよう熊がいる建物の前に立つ任務は正直、怖い」といい、頷ける。
茨城から「都会には熊がかわいそうというお花畑な人が多い」とメール。お花畑といえば、北海道で2018年8月、市の要請と警官立ち会いでヒグマに発砲したハンターの猟銃所持許可証を取り消した道公安委員会と裁判所の諸君である。撃った弾が周囲に害を与える可能性が否定できなかったと良識が花開き、猟友会を怒らせた。こんな事例から土崎でも関係者は腰が引けたらしい。
だが、あの露プーチンの猫と秋田犬を交換した佐竹知事は違う。「対応を説明しても分からない悪質なクレームにトップが毅然と対応をすることで職員もやりやすくなる」「私なら『お前に熊を送るから住所を送れ』という」と述べ喝采を浴びた。
マタギで有名な阿仁(北秋田市)のリンゴ農家は5、6年前から熊の出没に悩まされてきた。箱わなで昨年12頭捕獲した知人は、今年はゼロ、他の多発地区でも今年はいないようだという。だが発見し通報しても事情聴取はしつこく、「用心して下さい」と何もせずに立ち去る桜マッポは安全確保が主務と知った住民はアテにしていない。
秋田の独立峰「大平山」の馬場目岳を下りた熊は、湖東平野から橋を渡って広大な干拓地大潟村を横切り、男鹿半島の奥座敷、ナマハゲを祀る真山神社まで侵攻した。秋田市内も例外ではなく、挨拶の「つつがなく」が「クマがなく」になった秋田に安全域はない。熊に舐められたナマハゲやマッポをアテにせず法を熊仕様にしないと…。8日に再開した「いとく」で買った「高清水」紙パック大吟醸を飲みながら。〈2024.12.25〉
NHKのデータ放送から
八郎湖(八郎潟干拓残存湖・12月の初雪)
八郎湖にそそぐ馬踏川(潟上市大久保)
友川カズキ・ライブのテレビ画像(11月16日・秋田市キャットウォーク)
秋田放送のインタビュー
ライブ打ち上げ(友川さんは翌週「新宿ロフト」で、12月下旬は上海と北京で、1月は台北でライブと絵画展)