女子高時代からの親友がガンと分かってショックを受けた、自分に何ができるかと考えた末、毎日メールで励みになる言葉を送ろうと思い付き、本を乱読している、そうしたら私の方が安定してきたような気がする…。こんな患者さんがいた。
友人がガンになり、春先から庭の花々、ガーデニングの模様を撮影し、週1回、病床に送り続けたご婦人がいる。撮影のために、友人のために、その人は秋風が冷たくなるころまで花の手入れに余念がなかった。
冒頭の女性にこの話をして、花の写真でなくとも、療養の励みになりそうな絵葉書を求め、週1回でも、メールの合間に、あなたの言葉を1、2行書いて投函したらどうかと提案してみた。
ターミナルケア関連のある講演会。演者はスライド写真で病棟を紹介した。落ち着いた雰囲気のホールを飾る派手な抽象画…。ちょっと違和感を覚え、終了後に質問してみた。「作品は末期ガンの患者さんたちに好評ですか?」「残念ながら不評です。実は、理事長の好みで…」
健康な人はピカソもダリも楽しめる。だが弱っている人が好むのは、私の経験からすると少し違う。臨死体験をまとめた立花隆氏の著書には三途の川の一歩手前の光景らしいお花畑がよく登場する。そのお花畑のような作品が特徴の写真家が秋田県角館在住の千葉克介氏64歳だ。3年前に脳梗塞で倒れ、あわやの所で引き返して来た。北東北中心の風景写真は、3年前まで自治医大地下にあったアートインホスピタルで輝いていた。衰弱したターミナルの患者さんがじっと見つめていた光景が忘れられない。
「千葉さんの写真集、お友達に1冊どうぞ。よいお見舞いになりますよ」件の患者に勧め、「来年、パリで彼の個展をやろうと企む一味がいてね」「先生が会長さん?」「え、何で? 副かも…」「私、友達にこれを見せて、来年はパリに行こうと誘います!」励みになればいいね。花の都、芸術の都、パリ。ひと踏ん張りするか…。
(千葉克介HPhttp://chiba-katsusuke.com/)
千葉克介