三浦雄一郎氏、80歳にしてエベレスト登頂3度目の成功。「迷惑千万。都合の悪いことが年のせいに出来なくなった」とぼやく75歳男性は、酒肴は自分で買いに行くのに町内清掃には高齢を理由に出てこない。女性患者86歳は、「だって三浦さん、若いですもの」。山岳医の大城和恵氏は、「…生きて帰る。その思いが、息が詰まりそうになるほど素晴らしかった」と、やはり尋常ではない。
週1、2回、秋田山王テニス倶楽部に通うのが私の不養生対策である。昔、倶楽部に名物対戦があった。夫婦ではない82歳女性と81歳男性が、ともに若いペアと組むダブルス。ゲーム中、サイドを抜かれると爺さんは、「じゃじゃ馬!」と彼女を罵り、逆に彼のドロップショットが決まると彼女は、「いじわるジイ!」とまぜ返す。爺さんは心臓バイパス手術を、婆さんは胃がん手術を受けた後であったが、この対戦は私たちに勇気をあたえた。
5月連休に横浜のシニアチーム22名が秋田空港に降り立った。出迎えたわがテニス倶楽部一同は黒々と日焼けした彼らの顔にまず圧倒された。早大庭球部主将だった倶楽部社長は、「横浜の平均年齢69歳は私と同じ」というが、とてもそうは見えない。試合が始まって嫌な予感は的中。社長や若手らは奮闘したが他は大苦戦を強いられた。75、70歳の横浜ペアに私は弾丸サーブを放ったものの糠に釘、ほとんどポイントを奪えぬままゲームセット。
酒なら、と臨んだ懇親会。旨い秋田の酒に横浜勢は「秋田は練習不足だね」と舌も滑らか。60歳でテニスを始めた69歳の方は、「私にはまだ伸びしろがある」と胸を張り、検診で骨密度が30歳代と言われ鼻高々のご婦人もいた。
とは申せ、わが倶楽部シニア組と同様、彼らの多くも心臓病やがんなどを患い、三浦氏と変わるところはない。だがみな齢や病をあざ笑うかのように呑み歌い、「散りぬべき 時知りてこそ世の中の 花も花なれ 人も人なれ(細川ガラシャ)」とはちょっと違う、胸騒ぎの庭球69たちであった。
ジオンと私
田沢湖乳頭温泉郷の秘湯「鶴の湯」にて