毎年、田植えがストレスで不眠になる45歳男性が今年も受診した。堅物の彼が、「今日は腰痛の薬も下さい。先生の腰、今年は大丈夫?」と珍しくニヤリ。「読んだ?」「はい。自分もこの時期ぎっくり腰やるのでコルセットします」
彼が読んだのは秋田魁新聞が毎週発行するフリーペーパー(http://www.sakigake.jp/a/mari2/)マリマリ第4金曜号、私が担当して71回目となるコラム「輝きの処方箋」で、内容は以下の如し。
花見酒の後で何度かぎっくり腰をやり、あるとき因果関係を考察した。昼から夕方まで桜の下であぐらをかいて酒を飲み、腰にヒネリの負荷をかけ、翌日、腰に違和感を覚えながら中腰で作業をしていて突然、激痛に襲われる。花見は避けられない。だがあぐらは工夫できる。前兆である腰の重さを感じたら仕事はサボる…。
私のぎっくり腰発症?の地、秋田の角館に今年も出かけた。角館で交差する2本の国道は渋滞するので秋田駅で新幹線に乗り、角館駅から歩く。450本の枝垂れ桜を誇る武家屋敷通りは渋谷駅前スクランブルなみの混雑。その人垣を縫い、武家屋敷から10分で標高80メートルの角館城址・古城山(ふるしろやま)本丸に着く。人影はいつもまばら。眼下の街はすっぽり桜色。穴場だ。
登り口に七色稲荷神社がある。掃除している女性がいた。「7回つらい目にあって、七色に化けたキツネを祀っています。毎日拝むようになってから家庭円満、私も病気知らず…」ほう。「腰に効きますよ。先生もいかが?」えっ!
山を下り、呑めや歌えの酔客で賑わう桧木内川河川敷へ。目指すは角館の9月祭典「曳山ぶっつけ」上新町丁内若衆の花見会。今年も笛太鼓で絶好調。「先生、よぐ来てけだ。まず、かだれ(加われ)」花より団子。タブーのあぐらで乾杯。空は青、花は桜木、人は武士。2キロも続く土手の染井吉野は満開、頬を紅く染めた若衆は全開だ。角館病院勤務当時は、昼から川面を渡る夜風が冷たくなるまでやって、ぎっくり腰を招いた。最近は長呑みを避け、コルセットを忘れない。だが宵闇迫る街に繰り出してからが長過ぎた。あとは知らぬがお稲荷さん。翌朝の診察は頭も腰もきつかった。
武家屋敷通り
武家屋敷通りから間近の古城山
古城山本丸から
七色稲荷神社
檜木内川土手
角館上新町丁内