小学校の頃、学芸会で『動物会議』という芝居をやった。私は犬、友人は猿。この主役2匹は文字通り犬猿の仲だ。何か不正を働いた猿を会議で犬が糾弾するのだが、勝ち誇った犬が「こやつは…」と指さす先に座る猿は、舌を上の歯の下に入れ右手で頬をかきかき犬の方を振り返る。その仕草に犬のみならず猫も狸も爆笑してしまい次のセリフが出ない。何度繰り返しても稽古はそこで中断し、自己嫌悪に陥った犬はすっかり犬嫌いになってしまった。
前回、犬っこまつりについて書いたばかりだが、また犬だ。3月24日、栃木から秋田へ帰る新幹線の中で異様な気配を感じた。いつも騒がしい家族のラインが沈黙し、秋田駅へ迎えを頼んだメールにも応答がない。やむなく秋田駅で大久保へ向かう電車に乗り換えたところでやっとラインが動いた。と、そこに見たことのない犬の写真が載っている。しかも饒舌な娘たちのコメントがない。大久保駅へ迎えに来た妻も沈黙である。
翌夕、仕事を終え、医師会報を編集して居間に戻ったらチワワのジヨンも含め誰もいない。1人で缶ビールを飲んでいると8時過ぎに全員戻った。昨日ショップで見つけた小さなチワワが気になってまた見てきたという。昨日の今日、何を今更と言ったら、意を決した長女が口を開いた。「ジヨンには妹が必要です」「必要ない。ジヨンで間に合っている」私は一蹴した。
更に翌夕、終業後また会報を編集し7時過ぎに帰ったらまた犬1匹いない。大相撲千秋楽の録画を見ながら酒を飲んでいると8時ころ全員戻った。「ちょっと見て」と長女が玄関に私を呼ぶ。獣医大の末娘がラインで見た小さくて真っ黒いチワワを抱っこしていて「チコ。生後3か月」というが、ちょっと待て。「父は許可していない。この家の主は誰だ!」というと長女は「ジヨン、お父さんがご主人だって知ってた?」と卑劣にもジヨンをダシに使う。親父の権威も最近は廃用委縮だから仕方ない。新入りのチコ、ちょっとはかわいいかねジヨン? 唸るな、お前がボスだ! 家族会議を開きジヨンの地位を確認した。
1 咲き初めの栃木の桜を背に秋田へ帰ると…
2 はじめまして チコ、花も恥じらう3か月です
3 ポピーのように紅く可憐に咲いてみせます!
4 うるさそうなのがきやがった~ジヨン~
5 チコ、お昼寝の作法から学びま~す
6 ブルーメッセのチューリップが平成にサヨナラと咲き誇っています。明日はどっち?