その時代のニーズに合う物作りを
私木工ろくろ所謂木地師の道に就いて半世紀、祖父が昭和の初期に開業して以来、父に続き、ごく自然にこの職業を歩みだしました。木地師が使用する刃物は自分で鍛冶をして、用途により其々の形に曲げ焼きを入れて、刃を研ぎ出す事が必要です。この刃物作りの善し悪しが作業効率や製品の品質に影響します。
修行時代の五年程は時計の秒針と競争しながら制作する事が多かったのですが、徐々に品質本位に変えて行きました。
当初、観光地の土産品として物産店納めの物作りでしたが、自宅に店を作り、直接お客さんに販売して、意見や好みなどを聞くことによって、ニーズに合う物作りが出来るようになりました。
しかしながら、最近では生活環境の急激な変化に、製品開発も思うに任せず苦心しています。
現在、さまざまな場面において、緊急課題として技術の継承と後継者の問題は、その時代のニーズに合う物作りが出来る事が、大変重要で、解決の糸口に成るのではないかと思います。
そういう事を念頭に置いてこの道を歩んで行きたいと思っています。
(文:鈴木 正雪/下野手仕事会40周年記念誌『下野手仕事会四十年之軌跡』P50-51より)