「竹と灯り」をテーマに竹芸に新たな道を
那須地域は昔から篠の名産地として有名でした。しかし、今は生活様式が変わり、昔のものをつくっても売れない時代です。後継者問題もあり減少していますので、今、保存するための工夫をすすめています。伝統工芸を残していくためには本当に困難な時代だと思います。
私はもの心つく頃には、父(啓造)があぐらをかいて仕事をしている中に入って、見よう見真似で竹で遊んでいました。昔は生活と仕事場が一緒でしたから、父は狭い部屋で私が寝ている枕元で作っていました。日常生活と工芸は一体でした。そのうち自然に皆さんに認められていきまして、宮内庁からも注文がくるまでになりました。父は水上勉さんに「竹人形」の関係で御紹介を受け、皇后様のバッグを4点作らせていただきました。仕事は周囲から与えられるものですから、社会的にできることがあれば何でもやるということを父から教わりました。
今、新たな竹工芸を模索して「竹と灯り」をテーマにした作品に取り組んでいます。竹と灯りを組み合わせる事で、木漏れ日のような光りの広がりが美しい椅子やテーブルなどを製作しています。日常から開放された異空間をつくり、竹の感触がわかるようにゆったりとくつろげるように編んだ作品などです。
平成25年に「大田原竹芸研究会」を発足させました。作家さんも愛好家も含めて竹工芸を広げていく足掛かりにしたいと思っています。また、国内外の個展やグループ展による作品紹介で竹工芸を広めていますが、カルチャーセンターなど数カ所の教室で教えながら、一緒に「つくる」ことを楽しんでいます。これからも若い人たちが手仕事に興味を持ち、竹工芸の伝統を継承することができるように、さまざまな努力をしていきたいと思っています。
(文:八木澤 正/下野手仕事会40周年記念誌『下野手仕事会四十年之軌跡』P72-73より)