「伝統と文化―下野手仕事会―」No.31
吉田 宏 -衣裳着雛-
雛人形は、襞の芸術
仕事の上では、自分の手法の中で一貫する作業を施す、いわば一手で作り上げる十五人飾りを、世に送り出す雛づくりを目指してきています。
そのこだわりに、夫々の人形に命を吹き込むともいえる動態の襞付けがあります。座雛に起きる美妙な動きを感じさせるもの。特に立ち袴には、襞付けの手法に了(おわ)りはない。ときに、雛人形は、襞の芸術とも思っています。
平成8年史蹟足利学校野方丈へ両陛下の行幸啓の砌、五行思想の理になる創作人形「宇辰の鍾馗(朱赤怒髪巨眼開口の頭に炎上の陽光の朱赤の意匠)」の魂を入れる作業として、御進講申し上げた畳の席で一連の作業を了えると、御同行8名の方から一斉に拍手を賜る栄光に浴し生涯忘れることのない一瞬でした。
その後、茂木で開かれたインディジャパン300マイルレースでは、同種の作品が、記念品として栃木県知事から3年連続して、優勝者へ手渡される栄誉を授かっています。
(文:吉田 宏/下野手仕事会40周年記念誌『下野手仕事会四十年之軌跡』P80-81より)
下野手仕事会40周年記念誌『下野手仕事会四十年之軌跡』
- 発 行 日
- 2013年9月1日 第1刷発行
- 編 集
- 下野手仕事会四十周年記念誌編集委員会
- 発 行 人
- 下野手仕事会
- 編集・制作
- 有限会社 アートセンターサカモト
- 〒320-0012 栃木県宇都宮市山本1-7-17
- TEL:028-621-7006 FAX:028-621-7083
[定価]本体2,000円+税
©Shimotsuketeshigotokai.2013.Pronted in Japan
ISBN978-4-901165-06-8
◇問い合わせ先
下野手仕事会 会長 藤田眞一 TEL:0287-93-0703
(有)アートセンターサカモト TEL:028-621-7006
吉田 宏
昭和9年、佐野市生まれ。同29年、人形師畦上虎吉氏に師事。同33年、帰郷し家業の雛人形製作に従事。同45年、「吉貞人形工房」主宰。全国雛人形コンクール東京通産局長賞受賞。東京商工会議所会頭賞など受賞。平成13年、厚生労働大臣より卓越技能者(現代の名工)として表彰。
〒327-0835 佐野市植下町1121
TEL:0283-24-2628
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