アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「とっておきの一冊」No.13

『藤原秀郷 小説・平将門を討った最初の武士』
水野 拓昌 著

平安時代中期、平将門の乱を鎮圧した名将・藤原秀郷は下野で生まれ育った最初期の武士であり、栃木県が誇るべき英雄です。何しろ、多くの名門武家のルーツを探ると、秀郷に行きつくのですから。しかし、これまで語られることがあまりに少なかったのではないでしょうか。史料が少なく、生涯の大半の時期の事績が不明で、実像がつかみにくいのが理由かもしれません。また、反逆者の方が断然興味が湧くという人も多いでしょう。将門を題材にした小説は多く、勝者の秀郷はその敵役でしかありませんでした。ですが、ある時点まで秀郷と将門は全く同種の存在でした。立場を入れ替えていた可能性も大いにあります。秀郷はなぜ将門と戦わねばならなかったのか。少ない史料から見えてくる秀郷の苦悩は? 本書は、想像するしかない部分を含めて秀郷の生涯を追った大河ドラマです。

ムカデ退治で知られる「俵藤太物語」など、長く続いた武士の時代、秀郷は確かに英雄として讃えられていました。そして栃木県内にも、宇都宮の「百目鬼」をはじめ各地に民話が伝承されてきました。それは作り話であっても、昔の人が秀郷を誇りに思うと同時に親しみを感じていたことが見えてくるのです。

1000年以上昔の坂東の大地で活躍したスーパースター、藤原秀郷。最も古く、全く新しい英雄の物語です。


書籍情報

・書籍名:藤原秀郷 小説・平将門を討った最初の武士

・水野 拓昌 著

・発行所:小学館スクウェア

・〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2-13 神保町MFビル4F

・TEL03-5226-5781 Fax03-5226-3510

・価格:本体1,500円+税

・ISBN978-4-7979-8852-9

水野拓昌(みずの・たくまさ)

1965年、東京都出身。法政大学法学部卒。1989年、産経新聞社入社。整理部記者、地方支局記者などを経て、水戸支局次長、宇都宮支局次長を務めた。2019年、退社。栃木県宇都宮市在住。