アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「とっておきの一冊」No.18

『ファインダーの向こう側 ―田中正子の生涯―』 田中一紀 著

『ファインダーの向こう側 ―田中正子の生涯―』1,320円(税込)


私は田中正子という身近で一番知っていて、当たり前な存在のはずなのに彼女の事は何も知らない、理解しないで過ごしてきたのではないかと気付かされた思いで身も心も一杯になった。(中略)そして田中正子、いやその前に関根正子という人間、女性がどう生きてきたのか、私が知らない、私が見失っていた彼女を今一度見つめ直してみたい。

田中 一紀(「はじめに」より抜粋)


本書「ファインダーの向こう側―田中正子の生涯―」は2019年10月、74歳で亡くなった田中正子さんについて、44人の友人、知人、家族が執筆・インタビューを通して語った一冊である。

「本を出版してから私のもとに礼状や挨拶などを含めて、多くの方から反応がありました。」

著者である夫、田中一紀さんは言う。

友人や知人、家族の証言から“田中正子”という人物を様々な角度から浮き上がらせ、生きた証をたどっていく。

「私から見て、とても新鮮な感じをうけた話はいくつかありました。中でも正子の小さい頃の話は非常に印象深い、インパクトのある話でした。」と一紀さん。

また正子さんがコンテストで入賞した写真など37点が掲載されている。特に巻頭を飾る作品〈豪華絢爛〉は、鮮やかな色の枝垂れ桜の下で演奏される法蔵寺(日光市)の雅楽にクローズアップ。正子さんを象徴する作品となっている。この作品は、切手「日光紀行」のデザインに採用された。

「本に載っている写真作品集は、正子自身が撮ったものなので、どれも思い出深いです。彼女のファインダーを通して写し出された世界は、観る人に強いインパクトを与えます。」

正子さんは写真撮影に大きな情熱を注ぎ、数多くのコンテストで入賞してきたが「他人と同じものを撮っても面白くない」という、正子さんの写真に対するエピソードなども語られている。

数多くの写真を残した正子さんを、友人や知人、家族、そして夫・一紀さんのファインダーを通して語られるエピソードは、読んでいて引き込まれる。正子さんへの愛が詰まった一冊になっている。

田中一紀さん

「豪華絢爛」(切手「日光紀行」採用)


書籍情報

・書籍名:ファインダーの向こう側 ―田中正子の生涯―

・著 田中一紀

・出版:(有)アートセンターサカモト

・〒320-0012 栃木県宇都宮市山本1-7-17

・TEL:028-621-7006 FAX:028-621-7083

・ISBN978-4-901165-27-3

・価格:税込 1,320円